STORY

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ただのおっさんがあくまで自分のボケ防止のため書いてます。

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30秒のストーリー」 連載中(全話公開)
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赤い大陸 第1章「前世編」」 完結(1話のみ公開、2話以降はアメンバーのみ)

赤い大陸 第2章「現世編」 」 完結(1話のみ公開、2話以降はアメンバーのみ)

赤い大陸 終章「来世編」」 完結(1話のみ公開、2話以降はアメンバーのみ)
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ロックウィズユー」 完結(1話のみ公開、2話以降はアメンバーのみ)
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SUMMER1945」 休止(1話のみ公開、2話以降はアメンバーのみ)
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※下記画像はネットからの借り物で1979年当時の住友ビル周辺とは景色が異なります。

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 1979年、ボクは当時六本木のスクエアビルにあったネペンタというディスコで朝まで踊った。一緒に来ていたのは同じバイト先の二つ年上の先輩と同じ年の男だ。ボク達は閉店間際にディスコを出ると職場のある新宿まで戻った。

 

 まだ始発が走る前だったから当然タクシーだったけど割り勘だったからそんなにはかからない。

 

 ボク達が働いていたのは新宿の高層ビルにあったイタリアンレストランだ。仕事が終わって店を出たのがつい五時間前。丸の内線に飛び乗ったばかりだった。ボク達が寝不足覚悟で六本木に繰り出すのは今月これでもう三度目。そのぐらい夜の六本木は楽しかった。そして今朝も少しふらつきながら新宿に戻ってきた

 

 

 バイト先の店が開くにはまだ少し早い。喫茶ルノアールが性に合わないボク達は、歌舞伎町の薄暗く怪しげな店の二階で、ちょうど空いていたインベーダーゲームをしながら時間をつぶした。

 

 正月明けの東京。地元で東京とは遥かに違う異次元の寒さに慣れているはずのボクだけどここもそれなりに寒い。東京に出てきて1年。ボクの体がこの寒さに順応してしまったのだろう。外はよく晴れているようだが今朝の寒さは春の訪れはまだまだ遠いということを感じさせた。

 

 ゲームにも飽きたころ誰とも無く「店でちょっと横になろうぜ」と言い出した。右手のオレンジのダイバーズウオッチを見るとたしかにそろそろ早番の女の子が出勤して店の玄関を開ける時間だ。

 

 

 ボク達は歌舞伎町から職場のある西口の高層ビル街に向った。途中、左側に広がる大きな空き地は半年前までボク達が早起き野球をやっていた広場だ。しかし空き地は既に封鎖され、10年後ぐらいには丸の内から移転してくる都庁のために立ち入り禁止となっていた。

 

 バイト先の四十九階の店に着いたボクと同い年の男は掃除を始めていた早番の女の子に目配せをしてスタッフルームの奥のソファーで横になった。

 

 ところが「俺はもうすぐ出勤時間になるから」と既にコック服に着替えていた先輩がホールに出るなり「わーっ! 」っと大きい声をあげた。

 

 その声に驚き「何事だろう!? 」とホールに飛び出したボクと友達も窓の外に広がる景色に一瞬にして目を奪われ続けざまに歓声をあげた。

 

 

 そんなこと予想もしていなかったけど店の窓からはかすかに富士山が見えた。頭にはうっすらと白い帽子を被っている。まさに霊峰、富士山だ。

 

 まだ都庁が無い頃、そう、都庁が無いからこそ、その空き地の遥か遠くに富士山が荘厳にもその姿を現していた。

 

 「えー!ここから富士山が見えるんだ!? 」冬の寒い早朝、それもよく晴れた日にだけ拝める信じられない光景だった。

 

 あのときの自分の半日の行動、そして感動の光景は四十数年経った今でもはっきりと脳裏に焼きついている。

 

 これもまた忘れられない青春の一ページだ。