本稿は7月13日の續きになります。
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34 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
(生歿年不明 平安時代初期)
紀貫之と同時代に活躍
誰をかも知る人にせむ高砂の
まつも昔の友ならなくに
(古今集)
(歌の詠み方)
上の句 たれをかも しるひとにせん たかさごの
下の句 まつもむかしの ともならなくに
《歌意》
誰を親しい友人にしようか。長壽で名高い高砂の松も昔からの友人ではないのに。
歌の間のエピソード
歌の背景
*『古今集』に「題知らず」として
載せられている和歌ですが、
老ひて友がいなくなってしまった
孤独の侘びしさを詠ったものです。
語の説明
*「誰をかも」の「か」は疑問詞で、
「も」は詠嘆の助詞にあたります。
ですから、この意味は
「誰を○○にしようかなあ」
という意味になります。
ここでは、「誰を友達にしようかな」
ということになります。
この「誰をかも」は、
次の「せむ」に掛かる連用修飾語になります。
「誰をかも」の「誰」は、
「たれ」と必ず濁らずに詠んで下さい。
*「知る人にせむ」とは、
「親しい友達にしよう」ということですが、
「知る人」は「自分をよく知ってくれる人」ということで、
「に」は動作の結果を表す格助詞です。
「せむ」の「む」は意思を表す助動詞になります。
*「高砂」とは、兵庫県加古郡高砂のことです。
黒松と赤松が合体している
高砂の相生の松は昔から有名でした。
世阿弥の有名な謡曲『高砂』は
この松を謡ったものです。
結婚式で昔はよく謡われました。
庶民になぜこの松が流布したかというと、
能では住吉の松と高砂の松が
夫婦であるという伝説を素材として
天下太平を祝福したことから発展して、
婚礼の祝賀の謡いとして
常用されるようになったためです。
その他にも「高い砂の山」という意味もあります。この歌では、高砂という地名を言っています。
*「まつも」は、「高砂の松」のことですが、
暗に「誰かが來てくれるのを待ってゐる」
情況を指してもいます。
*「ならなくに」とは、
「なら」は断定の助動詞「なり」の
未然形で「~である」という意味になり、
「な」は打消の助動詞「ず」の未然形、
「く」は「な」を体言化して、
「なく」で「…ないこと」という意味になります。
「に」は接続助詞で「…のに」の意味です。
人物
*藤原興風は、古今集時代を代表する
歌人として『古今和歌集』には十七首載っています。
彼の作る歌は、まさに古今風和歌の
雅さと美しさに溢れ、
王朝文化人としての
面目躍如たるものを感じられるといえます。
紀貫之と同時代に生きた人です。
三十六歌仙の一人です。
*藤原興風は、お琴の名手としても
名前が残っていますが、
それについて詳しいことは分かっていません。
また、家柄は非常に高く
藤原京家という藤原本流の流れをくんでいます。
日本で最初の歌學の本
『歌経標式(別名『浜成式』)』という書を著しています。
かるた一口メモ
この歌は、「たれをかも」の
第二音「たれ」の「れ」で取ることができます。
基本的に「た」で始まる札の
全ては第二音で取れる二字決まりの札です。
この札で注意しなければならないことは、
下の句で取る人は「まつとしきかば」という札と
間違いやすいので気をつけて下さい。