当社が創業以来お世話になっているその会社さんに伝わっている「安全三訓」が以下である。
一.始めと終わりに注意せよ
事故はその頃起こりがち
二.心配する仕事に事故はなし
今日も心配明日も心配
三.二度あることは三度ある
事故は続けて起こりがち
「まさに!」と思うほど安全管理の核心をついた言葉であり、何年か前にこの言葉を印刷して当社の現場に配ったのだが、今も掲示しているのを見かける。
始めと終わりに注意せよ
事故はその頃起こりがち
という言葉は経験的にも実感していて、現場が始まる時、終わり間際、長期休暇前や直後は心配でならない。
難易度の高い現場を無事故で乗り越えたとしても、最後の片付けの最中のちょっとした作業で事故が起こることがある。
去年、とある現場の所長さんとそんな話をしていたら、まさに教訓のような話を聞いた。
その所長さんが以前担当した仕事で、最後の仕上げ地中に打ち込んだ鋼材を引き抜く作業があったそうで、やはりかなりの難工事を無災害で経緯しており、その作業を見ながら「いやー大変な仕事だったけどやっと一息つけるな」と関係者で話していたところ、最後の一本目の引き抜き中に重機が架空線に接触する事故が発生して周囲が停電騒ぎになり対応に追われることになったのだという。
「それ以来、本当にすべての作業が終わるまでは気を抜いていけないと思うようになった」とおっしゃっていたのが印象的だった。
古典の徒然草の中にある「高名の木登り」という話を思い出す。
木登りの名人がいて、人に指導して高い木に登らせて枝を切らせる時、危険だと思える高さの作業時は何も言わなかったのに、屋根の高さまで降りてきたところで「落ちるなよ。心して降りろ」と言葉をかけた。「これくらいなら飛びおりても無事に降りられるのにどうしてそのように言うですか」と尋ねると名人はこう答えた。「(私が言いたいのは)そのことです。目がくらむような高さで、枝が細くて折れそうで危ないときは、登っている本人自身が怖いと思って気をつけるので、何も言いません。けがは、安全なところになってからするものです。」
「もう危なくない」と思うことがヒューマンエラーを招くきっかけになるのである。