前回の記事の続きです。

 

 私だけその夜、夫の病室に1泊し、

娘は帰宅しました。

 

 翌日、ホスピスの医師の診断で

夫は希望通り、ホスピスに移りました。

 

 私は娘に病院まで迎えに来てもらい、

一緒にホスピスまで行きました。

 

 そこまではよかったのです。

異変が起きたのはその午後です。

 

 ホスピスから娘と帰宅し、

歯科衛生の予約があったのを思い出したので、

娘に車で送ってもらいました。

 

 そして歩いて帰宅してみると、

玄関から入ってすぐの

階段の前に娘の靴、

数段にわたってバッグ、

コートが点々と

置き去りにしてあるではありませんか。

 

 いつもはきちんとした娘の異変。

「どうしたの?」

と自室のベッドに横たわる娘に声をかけると、

「とてつもなくだるい。」

 

 夜になり、何とかダイニングに来た娘は

夕食も食欲不振でほとんど口にせずに

もうダメ、と、自分の部屋に戻って

横になりました。

 

 その後、頭痛、発熱。

 

 コロナに感染したに違いありません。

 

 病院に1泊した私は大丈夫なのに、

なぜ娘は…。

 

 考えてみると、

あわや父親の臨終かというときに

娘はぼろぼろ涙を流し、

手で拭っていました。

 

 父親の病室にたどりつくまでに

その手にコロナ菌がつき、

そうとも知らず、

涙を何度も手で拭って

コロナに感染した

に違いありません。

 

 コロナは本当に

非情です。