学校で何年英語を習っていても、リスニング力や英会話力が身につかない。日本でそんな悩みを抱える方は多いと思います。なぜなかなかリスニング力や英会話力が向上しないのか。それは、英語「を」習っているからです。


娘はカナダ生まれ、カナダ育ちのハーフで、英語、フランス語、日本語のトライリンガルです。私はオンライン作文教室「言葉の森 」で北米在住日本人またはアメリカ人・日本人ハーフの生徒に日本語作文を教えています。最近、アメリカ・ミシガン州の学校にも勤務し始め、娘と同じような10歳前後のアメリカ人・日本人ハーフ、アメリカ生まれあるいは幼少時からアメリカ育ちの日本人、または近年に日本からアメリカに来た日本人の生徒を教えています。この学校は有名校なのですが、英語か日本語のどちらかが得意という生徒がたくさんいます。この違いはどこから来るのでしょうか。


ここで、娘の言語環境をみてみます。


学校=フレンチイマージョンスクール(英語・フランス語バイリンガルを育てるカナダ独自の形式の学校)

授業は主にフランス語

先生は全員少なくとも英語・フランス語バイリンガル

 どの先生方も驚くほど、英語もフランス語も流暢でしかも両言語に訛りがありません。

 娘のJK(幼稚園年中)時の担任の先生はクアドリンガル(英語、フランス語、イタリア語、スペイン語)でした。

休み時間、友達とは英語で

家庭=日本からの通信教材や市販問題集を使ったホームスクールで日本語補習(つまり私が教えます)

ホームスクール中は日本語のみ

日常会話は、ママ(私)とは日本語、パパ(夫)とは英語で

TV番組は英語のみ


娘は英語、フランス語、日本語「を」学んでいるのではなく、3ヶ国語「で」学んでいることがわかります。ある言語「を」学ぶと、学習時間以外、その言語は使用しません。ところが、その言語「で」各教科を学ぶと、どの教科の専門用語も身につき、その結果語彙が飛躍的に広がります。たとえば、日本の小学校の算数の時間に「台形」を、日本の中学の数学の時間に「累乗」を習っても英語で何というかまでは身につきません(それぞれtrapezoidinvolutionまたはpower)。娘はこれらが3ヶ国語で言えます。


昔から「学ぶより慣れろ」と言います。言語「を」学ぶのではなく、言語「で」学ぶと自然に使いこなせ(=慣れ)るようになります。英語「を」学んだ後、英語「で」TV番組を見たり、考えたり、読んだり、書いたり、独り言を言ったりすると、リスニング力や英会話力の向上につながりますよ。