明けましておめでとうございます

今年でカナダ・オンタリオ州南部に住んで11年目になりますが、お正月は必ずカナダ国籍の夫も交えて家族みんなでお雑煮(京都出身ですので、味付けは必ず白味噌)と日本から取り寄せたおせち料理を食べ、花札や坊主めくりを楽しみます。私たちの住む街は日本人がほとんど住んでいず、もちろん日本文具を取り扱っているお店など全くありません。11年前、大学のクラブの後輩から結婚祝いは何がいいですかと聞かれ(大学を卒業して随分たっていたのに後輩がそう聞いてくれたのは日本の大学の体育会系クラブならではのありがたさ)、思わず花札、百人一首、ふろしきと答えました。残念ながら布製品は関税がかかるということで後輩は花札と百人一首を贈ってくれました。とても大切に使っているので、今でも新品そのものです。このお正月は、日本人の多いアメリカ・ミシガン州ノバイ市で去年買ったいろはがるたも楽しめます。海外にお住まいの方、花札、百人一首、いろはがるたはお持ちでしょうか。


花札、百人一首、いろはがるたは、赤と黒しかないトランプ等と比べれば、風情も美しさも世界でひけをとらず、日本の文化やカードゲームの誇りでもあると思います。しかも遊びを通して、花札は絵柄が各月を表していて(1月:松、2月:梅、3月:桜、4月:藤、5月:菖蒲、6月:牡丹、7月:萩、8月:芒(坊主)、9月:菊、10月:紅葉、11月:柳(雨)、12月:桐)自然の良さを、百人一首は短歌を、いろはがるたはことわざを学べるようになっています。9歳の娘はいろはがるたで遊ぶうちにたちまち47種類のことわざを覚えました。それ以外のことわざは、日本、海外を問わず日本語作文・小論文が自宅で学べる「言葉の森ことわざの木 のページを利用しよう、と考えています。また、百人一首があれば和歌だけでなく歴史的仮名遣いも勉強できます。日本では中学生になれば古典も習うので、あと何年かすれば娘と坊主めくりではなく、かるた取りをしよう、と考えています。花札、百人一首、いろはがるたは、日本の自然、文化、言語を学ぶための、日本国内、海外を問わず日本人のいる家庭の必須アイテムだと思います。

私は京都の高校で国語を教えていたので今でも古典文法はしっかり頭に入っていて、古典助動詞の活用、接続、意味もすらすら言えます。カナダに移住した今はその教養も全く使い道がないかといえば意外とそうではありません。他の翻訳者がみんな断るので、と私に依頼が来たのは何と昭和2年発行の化学特許。その特許は文語で書いてあり、古典そのもの―それを米国特許庁向けに英語に訳すという、何とも私向きの仕事が回ってきました。うれしいの何の、思わずその翻訳会社のマネージャーにこれからも日本語の古語の英訳なら私にまかせて、と頼んだくらいでした。

では、教養ついでにお聞きします。みなさんは年賀状または年賀メールに「明けましておめでとうございます」と「謹賀新年」のどちらを書かれましたか。平仮名を創作した女性は「明けましておめでとうございます」、漢詩・漢文が当時の必須教養科目であった男性は「謹賀新年」と書くのが平安時代からの慣わしです。ほら、私も冒頭に「明けましておめでとうございます」と書いたでしょう(笑)。

本年もよろしくお願い申し上げます