条件4のインターネットアクセスは、ネットワーキング作りだけでなく日本語力維持にも役立ちます。日本語の話し言葉には敬語や友達口調がありますが、海外では親子の会話だけでお子様にその習得・維持を図るのは困難です。また、うちのように日本語補修校が近くになく、TVジャパン(NHKの北米版)の視聴区域外で、一人っ子の場合はなおさらです。そこで我が家ではYouTubeで「サザエさん」、「アンパンマン」、「ドラえもん」を9歳の娘と見ています。こういうアニメは内容もよく、敬語や友達口調の習得・維持にもぴったりです。聞くだけで?と思われるかもしれませんが、話し言葉は何度も耳で聞いているだけで自然に習得するものです。

私は、京都府出身ですので、生まれてから何十年間も関西弁のうち一般の(舞妓さんが使うのとは違う庶民的な)京都弁のみを使って普段の会話をし、京都の高校や塾、神戸の専門学校での授業をしていました。その後カナダに来て5年間、国境を越えてアメリカ・ミシガン州の日本語補修校に勤めましたが、初めてそこで授業をする前に学校見学をさせていただきました。その際、生徒が全員東京語を話しているのを聞き、ここの生徒たちに国語、社会等を一般京都弁で教えたら戸惑わせるかもしれない、と咄嗟に判断し、その瞬間からずっと東京語のみで授業をしていました。それまで一度も東京語など話したことがなかったのですが、すらすらと口から出てきたので自分でも大変驚くとともに(生徒から、「先生は京都弁、東京語、英語のトライリンガル」と言われていました)、TVの影響は多大だな、と感心したものです。ちなみに私はカナダの家では娘に東京語で話していますので、娘は東京語を話しますが、去年(2010年)の夏に一時帰国で2週間体験入学させていただいたら、すぐに一般京都弁を覚えました(東京語、京都弁、英語、フランス語のクアドリンガル(笑))。

ぜひ海外ではYouTubeをお子様に見せてあげるのをお勧めします(無料ですしね)。ただし、中には改悪された内容の「サザエさん」、「ドラえもん」作品もありますので、必ずおうちの方が内容を事前に確認してお子様と一緒に見てあげてください(特にこれは敬語だよ、といった説明をする必要はありません―アニメを見ながら楽しく自然に、が基本です)。

次回はインターネットアクセスと日本語の書き言葉について説明します。