今年(2011年)4月24日から5月1日にかけてロシアのモスクワのメガスボルトで世界フィギュアスケート選手権が行われ、日本勢は女子シングルで安藤美姫選手が1位、男子シングルで小塚崇彦選手が2位を獲得したことはみなさんの記憶にまだ新しいと思います。この大会は本来、東京で開催される予定でしたが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で約1ヶ月間の延期後モスクワで代替開催されました。この場をお借りして、東日本大震災の被災地の一日も早い復興を心よりお祈りいたします。
さてこの大会の男子シングルで1位に輝いたのがカナダ勢のパトリック・チャン選手。彼は、こちらカナダでは、2010年バンクーバー・オリンピック前からオリンピック・スポンサー企業であるマクドナルドのCMで “I speak Chinese, English, and French.” と語り、トライリンガルのフィギュア・スケーターとして注目されてきました。4歳の時に香港からカナダに移住しケベック州モントリオール市で育ち弁護士となった父親、21歳の時に留学のため同じく香港から移住した母親をもつチャン選手は、オンタリオ州オタワ市で生まれ、家族と共にトロントに移った後、2009年にフランス語学校を卒業、フィギュア・スケートのトレーニングとの両立を目指して2011年9月にカレッジに入学予定だそうです(http://en.wikipedia.org/wiki/Patrick_Chan )。英語が主要言語であるオンタリオ州で生まれ育ち、家ではフランス語または中国語、学校ではフランス語を話してきた彼は成育環境上トライリンガルになるべくしてなったと言えるでしょう。
カナダの公立学校には、フランス語学校の他、英語とフランス語のバイリンガルを育成するフレンチ・イマージョン(French immersion)スクール、英語学校の3種類があります。少なくとも両親のうち一方がフランス語を母語とする場合、その子供はフランス語学校へ、両親が英語を母語または主要言語とするが子供の将来を考えてフランス語も話せるようにしたい場合はフレンチ・イマージョン・スクールへ、親が子供の英語・フランス語バイリンガル教育に関心がないかあっても何らかの事情がある場合は英語学校に行く傾向にあります。前回の『カナダの人はみんな英語・フランス語のバイリンガル?(その1)』でお伝えした通り、カナダでは英語・フランス語を公用語としながら二ヶ国語放送の発想がありませんが、すでに学校教育の段階でバイリンガル育成システムを用意しているからかもしれません。