散歩が嫌い
とか
触れられるのを嫌がる
とか
妙に犬見知り
とか
大好物は焼きうどん
とか
ウチの実家の愛犬は
なんというか内弁慶のちょっと変わり者で
つくづく犬で良かったと思う。
名前はチロル
由来は
豆柴で小さくてチロルチョコみたいだったから。
15年前に生後一ヶ月の彼は我が家にやって来た。
そこからは犬を飼っている家庭の大半がそうであるように
我が家も例に漏れずチロル中心の生活。
ちょっとオシャレに改装したはずの実家のリビングの真ん中には
彼の寝床となる毛布が敷かれ
その場所は帰省する度に増えていった。
改装台無し。。笑
特技は歌。
チェロやピアノを弾いていると一緒に合わせて歌うのだ。
ここでも犬を飼っている家庭の大半がそうであるように
我が家も例に漏れず犬バカで
前世はオペラ歌手だの凄い才能だのと盛り上がる。
勿論ただ伸びるいい声で吠えてるだけなのだが。笑
とにかく
周りにどれだけの光をもたらしてくれたことか。
その存在の大きさは計り知れない。
そんなチロルが今日未明亡くなった。
享年15歳。大往生。
危ないという知らせを受けてから
奇跡的に帰省できて、最期に間に合いはしたけれど
一晩側にいて
明け方さすがに疲れて
ちょっとうたた寝した隙に
逝ってしまった。
あと一時間起きていれば。
ホンの少しの後悔は否めなかったけど
誰にもジャマされず静かに逝きたい
それが野生の本能というやつだろうと思い
悲しいというよりは
楽に逝けてホッとしたという気持ちの方が強かった。
実感が湧かないからか
こんなに寂しくないものかと
平然としている自分に驚いたりもした。
その後
葬儀の為の箱にチロルの亡骸と共に花を敷き詰めたり
古くなったおもちゃやボールを入れて、旅立てるように準備を進める。
そして
とにかく食い意地だけは誰にも負けない彼だったから
最後に生前好きだった食べ物を袋に詰めてやろうとした瞬間
突然せきを切ったように涙が溢れて来て止まらなかった。
ここで?と思ったけど
実感とはそういうものなのだろう。
寂しさと、感謝と、祝福みたいな
自分でも説明出来ない気持ちが入り混じった中で涙をこらえきれず
ただただ「ありがとう」と
繰り返すのが精一杯だった。
15年前
チロルが我が家にやって来た頃の自分は
会社員を辞めてちょうど音大受験の準備をしていた。
15年経って
音大も卒業し、チェロ奏者となり8年間在籍したオーケストラも退団。
新たな一歩を踏み出している今
チロルの死は
奇しくもそんな自分にとっての一時代の終わりを告げるように突然やって来た。
とても穏やかで希望に満ちた
ある晴れた春の日の出来事として。