まりゑ殿
かねて覚悟し念願していた「海い征かば」の名誉の出発の日が来た。
日本男子として皇国の運命を背負って立つは当然のことではあるが然し
これで「俺も日本男子」だぞと、自覚の念を強うして非常にうれしい。
短い間ではあったが、心からのお世話になった。俺にとっては日本一の妻であった。
小生は何処に居らうとも、君の身辺を守っている。正しい道を正しく直く生き抜いてくれ。
子供も、唯堂々と育て上げてくれ。所謂偉くすることもいらぬ。金持ちにする必要もない。
日本の運命を負って地下百尺の捨石となる男子を育て上げよ、小生も立派に死んでくる。
充分体に気をつけて栄へ行く日本の姿を小生の姿と思いつつ強く正しく生き抜いてくれ。
大東亜戦争に出陣するに際して
昭和十八年九月二十一日
少し以前は、生きたくても生きれない人達がたくさんいました。
そして、そんな時代も終わり、その時から比べると、何不十無く暮らせる時代になりました。
でも、時代がどんどん豊かになるに連れて、心が貧しくなっている時代のような気がします。
物質と心の豊かさって反比例するのかもしれませんね。
