しんけん、あちぃ日が続くけん、やおねーなー。【ことば屋リレーエッセイ】 | ことば屋~美しい日本語のレシピ~

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ことば屋がお届けする美しい日本語のレシピ✨✨

『🍀ことば屋🍀リレーエッセイ』
 
こんにちは🎶今年1月から始まったことば屋リレーエッセイ。
ことば屋では、2022年の新しい試みとして、5月18日の「言葉の日」にちなみまして、
毎月18日にメンバーがリレー形式で「ことば」に関する話題や豆知識等を皆様にお届けしています。
 
今月は、宮坂珠理アナウンサーからバトンを受け取った、私、山中志乃が担当いたします。

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「しんけん、あちぃ日が続くけん、やおねーなー。」
 
これ、何を言っているか分かりますか?
「とっても暑い日が続いてるから、キツイね」
私の故郷の方言です。
 
日本全国梅雨入りし(北海道以外ですが)、雨が降り続く日々ですね。
少し気が早い話ですが、あと1か月もすれば夏休み!ここ数年はコロナ禍でなかなか帰省もできない状況でしたので、今年こそは…と考えている方も多いかもしれません。
私もその一人です。
 
私の実家は、海風山風が通り、真夏でもクーラーなしで過ごせる日があります。
…というと、北海道や東北?いやいや、九州の大分県です。
九州と言えば、南国のイメージがあるかもしれないのですが、私の故郷は海と山に囲まれ、気持ちの良い風が吹き抜けます。東京より涼しいくらいです。  
 
今回は、そんな私の故郷、大分弁について話したいと思います。
代表的な大分弁は、「よだきぃ」。 聞いたことありますか?
意味は「面倒くさい」。
例えば「しゃっち、あんげ こんげいっちから、よだきぃっちゃ」 。
訳すと「無理にあっちこっち行ったら、めんどくさいよ」となります。
実際に耳にしたら、異国の言葉に聞こえるかもしれません。
ここまでの大分弁は、今、若い人はあんまり使わないかもしれませんが、私が子どもの頃は年配の方が話すのをよく聞きました。
 
また、大分弁の特徴の一つに、語尾に「〜っち」とか、「〜ちゃ」が付きます。
これは「〜だよ」とか「〜です」にあたります。 例えば、
母:  「あんた、はよ勉強せんかぇ(あんた、早く勉強しなさい)」
娘:「わかっちょんっちゃ(わかってるよ)」
と、こんな風に。  
 
このように語尾だけが変わるなら何となく意味が通じるかもしれませんが、方言は、きちんと意味を確かめないと間違って理解してしまうこともあります。
 
マスコミで仕事をしている知人の話です。
彼は関東から大分に赴任しました。そして、ある地元の方に、取材をしていました。何度もその方を訪ね取材を重ねていて、ある日、その地元の方が、
「明日は、よこいやけんなー」
と言ったそうです。
彼は、「明日何か特別なイベントがあるから、それに参加し取材をしなければ!」と思ったそうです。そして、次の日またその方を訪ねました。が、その方は家で休んでいたそうです。
「よこいやけんなー」とは、「お休みだから」という意味だったんです。 「よこう」→「横になる」→「休み」となる訳です。
 大分弁を知っていれば、「よこうんなら、私も明日はよこうか」となるかもしれないのですが、大分弁を知らなかったばかりに、無駄足になってしまいました。
 
また、私は、家族の仕事の都合で広島県に住んだ事があります。 そこで広島弁に触れてみて、何となく大分弁と似ているな、と感じていました。
後から知ったことですが、大分県は、同じ九州でも険しい山々で隔てられた福岡や熊本より、距離はあるものの海を挟んだ中国・四国地方の方が交流があったそうです。そのようなことからお互いの話す言葉が近くなったと言われているそうです。
故郷を離れての生活でしたが、言葉の雰囲気が似ているだけで何となく居心地よく過ごしていたのを覚えています。
ちなみに私が広島弁で一番好きなのは、「ホンマじゃ」です。思いっきり同意している感じと、響きの可愛さがたまらなく好きなんです。
 
 
梅雨の晴れ間の、建物の間の夕空を眺めていたら、広い故郷の空を眺めたくなりました。
そして、無性に大分弁が喋りたくなりました。
 
方言マジック? 
方言って、耳にするとホッとしたり、ふるさとを恋しくさせる力があると思いませんか?
 
このあと久しぶりに大分の友達に、「連絡でんしちみようかな?」
 
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写真は、大分空港からの瀬戸内海の眺めです。空が広いでしょ?
そして、荷物を受け取るターンテーブルには、海老やマグロ、ウニも流れてきます。
   
 
今月の『ことば屋リレーエッセイ』は「故郷大分の方言」のお話をしました。
さて、来月は7月18日。
担当は、村瀬ひとみアナウンサーです!
お楽しみに!