・人間という奴は、考えは偉いが実行となると弱いもんだ。そこに

 我々の不幸もあり、魅力もあるんだね。

 

・ 生活とは他人によって生きる事だ。時折ひらめく人情の小さな

 火花…こいつは、むざむざなくしてしまってはならんよ。生きる

 事が辛いときに、力づけてくれるから。

 

・ ひとりぼっち…人生の永遠の折返句だ。ほかのいろんなものと

 比べて、よくもなければ悪くもない。人はあまりにそれを口にし

 すぎる。人間はいつでもひとりぼっちなのだ。

 

             母ねむり 八十八夜 月まろし   古賀まり子

 

      約束の 最後の橋の 雪明かり  水野真由美

 

      彼一語 我一語 秋深みかも    高浜虚子

 

      去年(コゾ)今年 貫く棒の如きもの  (  同  )

 

      苗代や 家は若葉に 包まれて   原 石鼎

 

      口数は少なけれども 面会を

           心待ちせる 夫(ツマ)の面ざし  恒川田津子

 

      独り碁や 笹に粉雪(コユキ)のつもる日に 中 勘助

 

      さいはての 駅に下り立ち 雪あかり

            さびしき町に あゆみ入りにき  石川啄木

 

成熟するとはどういうことか。感情を抑えることができ、人の

 いうことを聞くことができるようになることである。なにが大切

 かを見抜くことができ、自分を律することができるようになる

 ことだ。       ( 勢古浩爾 「定年後7年目のリアル」 )

 

・ 現在の生活に不満はない。なにをするにも基準は、単純に

 自分の好き嫌いだけになってきた。  ( 同 )

 

・ いまの暮らしを肯定して、これが自分のスタイルなのだ、と毅然

 としていうことができないものか。  ( 同 )

 

・ よくもこんなに長い時間を生きてきて、こんなに遠くへ来たもの

 だ、という感慨。それは、人生の「遠く」まで歩いてきた自分への

 ねぎらいと、よくここまで来れたものだという安堵と、こんなところ

 にしか来られなかったかという、いささかのやるせなさと、もう

 ひとがんばりするのかなあというゆるやかな前進への意欲が

 ないまぜになっているようなものだ。  ( 同 )

 

・ 神様に「どうかね。もう一回人生を最初からやってみるか」と

 いわれても、いや「私はもう結構」というだろう。 ( 同 )

 

      落  葉    ヴェルレーヌ

  

   秋の日の

   ヴィオロンの     鐘のおとに     

   ためいきの      胸ふたぎ      げにわれは

   身にしみて      色かへて      うらぶれて

   ひたぶるに      涙ぐむ        ここかしこ

   うら悲し        過ぎし日の     さだめなく

                おもひでや     とび散らふ

                            落葉かな

 

       除夜の作  高 適

     旅館の寒灯 独り眠らず

     客心何事ぞ 転た(ウタタ)凄然

     故郷今夜 千里を思ふ

     霜髪 明朝又一年

 

        村  夜   白居易

     霜草蒼々 虫切々

     村南村北 行人絶ゆ

     独り門前に出でて 野田を望めば

     月 明らかにして 蕎麦 花雪の如し

 

    気持ちのよい生活を作ろうと思ったら

       済んだことをくよくよせぬこと 

       滅多な事に腹を立てぬこと

       いつも現在を楽しむこと

       とりわけ人を憎まぬこと

       未来を神にまかせること    ( ゲーテ) 

 

・ 僕らは謙虚でなくっちゃいけない。静かな生活の美しさを知る

 べきだ。”運命”の目にさえ気づかれないで、そっと人知れぬ

 一生を終わるべきなんだ。   ( モーム )

 

・ 一粒の麦 もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてありなん。

 もし死なば、多くの実を結ぶべし。  ( 新約聖書 )

 

・ 昔 僕は無知蒙昧な少年で、何にも知らず人生の迷路を歩いて

 いた。しかしその当時、僕の心は憧憬に溢れ、人生は生きるに

 値すると思い、魂を美しくすることをひたすら求めていたのだ。

                     ( 福永武彦「草の花」 )

 

・ どのやうな青春を彼らは愉しむことができただろうか。どのような

 生きる悦びを彼らが知っていたと言へるだろうか。 ( 同 )

 

・ 若さかくて虫食われゆき、仕合せも陋巷のうちに見つけしと

 なむ。

 

   悲しめるもののために みどりかがやく

   くるしみ生きむとするもののために、ああみどりはかがやく

 

   妻をめとらば 才たけて みめうるわしく 情ある

   友を選らば 書を読みて 六分の侠気 四分の熱

                      ( 与謝野鉄幹 )

 

     ひと夜さに 嵐来たりて 築きたる

            この砂山は 何の墓ぞも  ( 石川啄木 )

 

     砂山の 砂に腹這い 初恋の

            いたみを遠く 思い出ずる日  (  同  )

 

     しらしらと 氷輝やき 千鳥なく

            釧路の海の 冬の月かな (  同  )