“英語ってシンプルなんだな”
そう思ったのは、オーストラリアの語学学校に通っていたときのこと。
その日は、私が在籍していたクラスで誰かが何かをした日だった。
…というと、なんてひどい表現なんだ!と思うのだけれど、誰が何をしたのかは全然覚えていないの。ごめんなさい。
実際は何かをした日だったのか、何かを話した日だったのかすらも忘れてしまったのだけれど、とにかく普段とはちょっと違ったことがあり、そこには校長も顔を覗かせていた。
ちょっとした感動が沸き起こり、場が盛り上がる。
ワイワイしている中、誰かが校長も涙ぐんでいたことを口にした。
すると遅れてその場に来て、校長の脇から顔を覗かせていた若い女性教師が、彼に向かって訪ねたのだ。
「Did you cry?」
うおおっ!
そんな聞き方、アリなんだ!!
ワイワイがやがやしている中、そのやりとりをたまたま目にした私は1人興奮し感動していた。
ご覧のとおり、ものすごくシンプルな表現。
中学1年の終わりだったか、2年の初めだったかは忘れたけれど、過去形を習えばわかる。
そんな表現で訪ね、校長も普通に答えている。
「Yes.」
なんと!
年上の上司に、そんなにシンプルな言葉で語りかけていいんだ…!
「Did you cry?」なら、私も言えるよ!!
これがもし日本語だったら…
「泣いたの?」なんて上司に聞いたりしない。
ではもう少し丁寧な表現を使って「泣いたんですか?」なら言うのか?
いや、言わない。
じゃあ尊敬語を使えばいいのだろうか?
「お泣きになったんですか?」
うーん…気持ち悪い。
あ、そうか。
そもそも日本人は、上司に対して泣いたかどうかを聞いたりしないんだ!
という結論に達しはしたのだけれども。
なんともはや、私はこの「Did you cry?」に心奪われた。
難しくないじゃん、英語って!!
そう思った瞬間だった。
受験英語とか、英語圏の大学に入って専門分野を学ぶとか、そういったことのために必要な英語は大変だし難しい。
少なくとも、私にとっては。
でもごく普通の会話なんてこんなもの。
こんなもので、いいんだ。
おそらくもし、私の姪っ子が私に同じことを聞くならきっとこう聞く。
「泣いちゃったの?」
「泣いたの?」より、より優しい。
日本語の『~ちゃった』は奥が深いと私は思う。
これを正確に日本語の文法表現として何と言うのかを私は知らないけれど。
英語で言えば現在完了における完了直後や経験という時間軸だと説明されるのよね。
自分の母国語基準で他の言語を見るとかえって混乱する。
「Did you cry?」と「泣いちゃった?」がいい例だ。
自分が当たり前だと思っている価値観でものを見るから戸惑ってしまう…
というのと、似ているね。