ロシアのAさんとのコトバ遊びは、当然
ロシア語だけではなく日本語でも行われる。
車の中で話をしていたときAさんがコトバを発見する場面に遭遇した。
「エトロフトウ…クナシリトウ…
OH!『トウ』…『オストロフ』?!」
「ん?」
「『トウ』…island?!」
「そうそう!」
まるで赤ちゃんがコトバを発見する瞬間に立ち会ったよう。
『トウ』が『島』を意味するということをAさん自ら発見した瞬間だった。
こういう“自分で見つけた音”というものは、決して忘れない。
どんなに勉強しても勉強しても、がんばって暗記したはずの英単語が
いつの間にか自分の中から跡形もなく消え去ってしまっている…
…という経験をお持ちの方は多いだろう。
でも今回のAさんのように、コトバの音と意味のつながりを自分で見つけると
そのコトバは決して、自分の中から消えてはいかないのだ。
大通公園を散歩しながら
『チェブラーシカ!テレヴーシ(ュ)カ!」』を楽しんでいたとき
もちろんAさんも 「テレヴーシ(ュ)カ、日本語…?」 と聞いてきた。
「『テレビ塔』 だよ」
するとAさんは困ったような不思議そうな、そしておもしろそうな
何とも言えない表情で続けた。
「コーヒート… エトロフトウ… テレビトウ…?」
(コーヒーと… 択捉島… テレビ塔…?)
なるほど なるほど!
そういう関連付けがなされるわけか!
おもしろい!!
『コーヒーと…』の『と』 は 『トウ』じゃなくて『ト』。
ロシア語では『и(イ)』。
『択捉島』と『テレビ塔』の『とう』 は 『トウ』だけど、
『択捉島』と『テレビ塔』の『とう』は同じ音でも漢字が違うの。
日本語には、同じ音だけど違う漢字で意味が異なるものが
たくさんあるのよ。
説明するとAさんは納得。
でも困っていた。
そりゃそうだ。
“ひとつの音にひとつの意味”どころか
日本語を話す日本人のほとんどは
“ひとつの音がいくつの意味を持っているか把握していない”のだから。
海外の日本語学習者は大変だ。
そして彼らはいつも、とても興味深い角度から
日本語を見せてくれる。
だからおかげさまで私は、日本の外と共に
中もまた、深く見ることができる。
すごくおもしろい!