チェブラーシカとテレヴーシ(ュ)カ | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

初めて聞いた音はなかなか覚えられない。
でも聞いたことのある音はすんなり自分の中に入ってくる。

だからコトバは、まず『音』があってこそだ。
その方が自分の中のコトバの増え方が圧倒的!


たとえばガボンの2人が話すフランス語。
ラテン語系ということで、初めて聞くフランス語のコトバでも
イタリア語やスペイン語の知っている単語が助けてくれた。

たとえばフランス語で『話す』は『parler(パーリィ)』。 (カタカナ表記はほんの目安ね)
イタリア語の『parlare(パラーレ)』を知っていたおかげで
その音はストンと私の中に落ちた。

同様にフランス語の『聞く』は『ecoutez(エスクテ)』。
これはスペイン語の『escuchar(エスクチャール)』が助けてくれた。

そしておもしろかったのがフランス語の『暑い』、『(ショ)』。
漢字を見てお気づきの方もいらっしゃるかもしれない。
そう、日本語の暑いの音読みが『ショ』なのだ。

おかげで『寒い』はなかなか覚えられないのに
『暑い』は一発で私の中にインプットされた。



そして今回、ロシアからのゲストのAさんとのやりとりの中でもやっぱり
もとからある音のおかげですんなり入ってくるロシア語がたくさんあった。

たとえば。

札幌を象徴するもののひとつに、『テレビ塔』がある。

「何て言うの?」
いつだって私は興味津々。

「『テレヴーシ(ュ)カ』だよ」
Aさんも楽しそうに教えてくれる。


 え?!

 チェブラーシカ?!


似ている音がおもしろくて、思わず口にする私。
Aさんは大笑い。

「違うよ!チェブラーシカじゃないよ!」
と、大きな耳のジェスチャーまでつけてくれちゃって。

その仕草がなんともかわいらしい。

そして私はリズムをつけて、何度も何度も繰り返す。


 「チェブラーシカ! テレヴーシ(ュ)カ!」


楽しくって仕方ない。
今度は耳のジェスチャーや塔のジェスチャーをつけて


 「チェブラーシカ! テレヴーシ(ュ)カ!」


これは、私たちがそれまでの時間を共有し
お互い心がオープンなっていたからこそできたコトバ遊びだ。

そしてその後も、おもしろいコトバを見つけては同じように遊んだ。


 「ババチカ! バブシ(ュ)カ!」


これは『ちょうちょ』と『おばあちゃん』。



ネイティブにとっては、決して間違えないコトバたち。
似ていることだって、非ネイティブに言われて気づくようなものだ。

でもその言語を母国語としない人間にとって
こういう言葉遊びはとても価値があるように思える。

遊びの中で、体験の中で自分の中に落ちた言葉は決してなくならない。

 『テレヴーシ(ュ)カ』

私はきっと、一生忘れない。

そして次にロシアからやってきた人と出会ったとき
ワクワクしながら自信満々に言うんだろうな。

 「エータ テレヴーシ(ュ)カ」 ってv(^^)