フロマージュとマリアージュ | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

ガボンの2人と過ごした日。
家にお迎えする前に北海道神宮を見に行った。

ラッキーなことに、その日は2組の結婚式に遭遇。

「mariage ?!」 と彼女たちは大興奮!

そりゃそうだ。
神宮での結婚式は純和風だもの。

でも傍らで、実は私も密かに興奮していた。


 そっか!マリアージュだ!

 フランス語で結婚(式)はマリアージュ!

 言われてみればそうだわよ!!


『マリアージュ』なんて、過去に何度も耳にしたことがある言葉だし
実際それが『結婚』を意味するコトバであることも過去に理解していたことはある。

でもその言語の話者がリアルな場面で
その言葉を使ってくれたときの自分の中へのコトバの落ち方は、
頭での理解をはるかにしのぐ説得力があるのだ。

私はおそらく、もう一生『mariage』を忘れない。



しばらくして、私の頭の中にふと、ある単語が思い浮かんだ。


 『fromage』


フロマージュ。
チーズだ。

途端に私の頭の、オモシロスイッチがオンになった。


 マリアージュとフロマージュって似てる~!!

 何でかな?

 何か関連性があるのかな?!


ひとりで勝手に興奮した私は、迷いなく彼女たちに語りかけた。


 「『mariage』と『fromage』って似てるね!!」


でも彼女たちは「ん?」という表情をしただけであっさりスルー。
通じていない。

一瞬、フランス語と英語を混ぜて言ったからわからなかったのかな?と思ったのだけれど
それはおそらく違うだろう。

きっとフランス語話者の彼女たちにとっては
『mariage』と『fromage』が似ているなんていう発想そのものがないのだ。

これは、以前アメリカの男の子が言っていた
「日本語って似たような音ばかり!たとえば『遠足』と『隕石』とか!」
に共通する感覚なのかもしれない。


 いやいやいや…

 全っ然似てないよ!


母国語だと絶対に間違えないところで聞き間違うのが外国語。
母国語だとありえないもの同士を『似てる』と関連づけてしまうのが外国語。
母国語だと思いもしない発想が湧き出てくるのが外国語だ。


『マリアージュ』と『フロマージュ』。

似てるじゃん!!と思うけど、それはきっと私が日本人だから。

「まぁ『アージュ』という音は一緒だけどね~…」
もし認めてくれるフランス語話者がいたとしても、きっとせいぜいその程度。


これは小さな子どもが「つぐ」と「つむ」のように似た言葉を言い間違えたり
(うちの姪っ子は「ご飯積んで」と言う^^ )
「おつくえ(机)」と「おくつえ」のように入れ替えて言っていたり
「収賄疑惑」を「シュウマイ疑惑」のように知ってる言葉に当てはめて聞いたりしているのと
同じようなことなんだろうな。


『マリアージュ』と『フロマージュ』

似てると思うんだけどな~(笑)


コトバってやっぱりおもしろい!