100が違って… | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

ロシアから来たR君を見送る道すがら
新たに覚えたロシア語を次々と口にする私。

「数字は?」と聞かれ、数えはじめる。

「1、2、3、4、5… …あれ?」 なーんて。

笑ってるんだか呆れてるんだか、
「100は簡単でしょ?」とR君。


 うん、そうだったそうだった。

 えーとね…

 ………あれ?

 何だっけ?


困った顔して見上げれば、やはり笑ってるんだか
呆れてるんだか…な表情で教えてくれる。

 R君 「『スト』だよ」

 私  「そうだ!『スト』だった。
      あ、じゃあもしかして200は『ドゥバスチ』?」

 R君 「違う。『ドゥヴィスティ』」

 私  「そうか(笑)」


末尾の『百』だけじゃなくて『2』も変化するから難しい…


 私  「あ!じゃあ300は『トゥリスティ』?」

 R君 「違う。『トゥリスタ』(笑)」

 私  「えーーー!!何で~~~っ?!」


R君も苦笑い。

女性名詞、男性名詞によって活用が変化する言語は多い。
ましてやロシア語には中性名詞も存在している。

加えて単数形・複数形という数の概念。

すべて日本語にないものだから感覚としての馴染みがない。

このあたり、外国語を学ぶ日本人が躓きやすい部分よね。


この前日、ロシア語の単語は「1」の時と「2~4」の時と「5以上」の時で
すべて単語の末尾が変わるという話は聞いていた。

『10』と『20・30・40』と『50~90』だって、表現の仕方が違うのだ。


でも100単位で数字だけを見たら、また違った法則があった。

まぁ10単位でも言い方がいろいろな言語はたくさんある。

日本語のようにわかりやすい法則の言語ばかりじゃないのは
わかってはいるのだけれど。


 でも何で100、200、300がそれぞれ
 『スト』『ドゥヴィスティ』『トゥリスタ』なの~?!

 『スト』『ドゥバスト』『トゥリスト』でいいじゃない!

 なーぜーーーっ!?


なんて思ったのだけれど、ふと気がついた。


 日本語も、そうなんじゃない?


『100(ひゃく)』『200(にひゃく)』…ときて、300は『さんひゃく』にはならない。
『さんびゃく』だ。

600や800なんて、『ろくひゃく』や『はちひゃく』じゃなくて
『ろっぴゃく』や『はっぴゃく』。


 『ひゃ』 『びゃ』 『ぴゃ』

 おまけに小さい『っ』が入ってしまったりして。 

 日本語もわけわからんではないの!


もちろん私たち日本人は、それを自然に使い分けている。

でも日本語を“学ぶ”人にとっては…


 「どうしてそうなるのーーーっ?!」 


という声が聞こえてきそう^^;


ロシア語のこの『スト』『ドゥヴィスティ』『トゥリスタ』も
結局そういうことなわけだ。


きっと法則がある。

言語学的に言えば、何かしら、ある。


でもやっぱり、こういうのって
自然に身につけられることほど強いことはない。

だって私は、法則なんか知らなくてもこの日本語を絶対間違わないもの。

環境ってすごいね。
環境っておもしろいね。