サビオ①~得意気な私 | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

知らなかった言葉が理解できるようになると
ちょっと得意な気持ちが沸いてくる。

外国語であっても、日本語の方言であっても。

でもおそらく、現地の人にとっては私が何故その時
得意気なのかはサッパリわからないんだろうな。



私は学生時代から10年ほどキャンプのリーダーをしていた。

主な活動は夏に子ども達をキャンプに連れて行くこと。
その団体の職員と一緒に、企画から運営までに携わる。

生きること、人と関わることの根底を
楽しみながら学び身につけた場だったように思う。

まだ北海道に来て1年も経たない頃、
あるご縁をいただき、大学の野外活動の場に関わらせていただいた。

どんなに気をつけていても
野外活動に多少のケガはつきもの。

その日も、ひとりの男の子が私のもとにやってきた。


「すみません!サビオありますか?」


“サビオ”

それは私が、北海道に来てから知ったコトバ。

初めて聞いたときの感想はご多聞に漏れず
「なんじゃそりゃ~?変なの~!!」
だった。

まだ私にその地のコトバを受け入れる器がなかったから。

そして何故かその言葉を聞いたとき、
私の頭の中には大きな魚が浮かんでいた。

サバとトビウオが混ざった感じ?
(意味がわからないけれど…^^;)


でもその頃は、少しずつ器が広がりだしている頃だった。


「サビオ!サビオね!私知ってるよ~!!」


嬉しくなってその男の子の前で興奮をあらわにする私。
キョトンとしている彼。

そんな彼にかまわず、私は続けた。


「知ってるよ!サビオって、絆創膏のことでしょ♪」

「はぁ… ???」


何故そんなに私が嬉しそうなのか、当然彼にはわからない。

当たり前だ。
生粋の道産子なんだもの。

困ったように眉を寄せている彼に、多少落ち着いた私が説明する。


「サビオってね~、北海道でしか言わないよ」

「えええ~~~っ?!そうなんですかっ?!」


もし他でも言っている土地があるのなら、
私が知らないだけなのでごめんなさい。

でもまぁとにかく、彼はとても驚いていた。


「じゃ…じゃあ、何て言うんですかっ?!」


この言葉、実はよく言われる。

北海道の人は比較的、自分達が標準語を話していると思っている。
北海道弁は西日本や東北の方言ように、
明らかにテレビで見聞きする言葉とは違うと認識しやすいものではないから
尚更なのだと思う。

そして生活に根付いた言葉は、
それがその土地でしか使われていないものだなんて気づきようもない。

だから日本全国、みんなが話していると思っていた言葉が実は
自分たちの土地でしか通じないと知ると驚くのだ。


でもそれは、別にそれは北海道に限ったことではない。
もっと言うと、地方に限ったことですらない。

東京も同じだ。

東京は首都だし標準語と呼ばれる言葉を話しているということで、
自分たちが基準になっていると錯覚してしまいがち。

テレビ番組にも東京ローカルがあることとか
東京でしか通じない言い回しがあることなんて
東京人はまったくわかっていない。

…お恥ずかしながら^^;

ちょっと脱線するけれど、テレビが地デジ化される前
日テレを「4チャン」、TBSを「6チャン」、フジテレビを「8チャン」etc...
なんて言っていたけれど、あれは東京近郊でしか通じない。

東京人は、それを知らない。

少なくとも私は知らなかった…。



…というわけで、私は彼に説明した。

「うーん…絆創膏かな。
 東京だとバンドエイドとか言うこともあるけど
 北海道だと言わないのかなぁ?」

「へ~…」

要するに、サビオもバンドエイドと同じ。
絆創膏というカテゴリーに属するもののひとつの商品名というわけだ。

つまり、私が小さい頃に「バンドエイドちょうだい」と言っていたのと
彼が「サビオください」と言ってきたのは、同じこと。

何も、おかしなことではない。

ただ私が、「それ知ってる~!」と大興奮したことによって
彼も新たなことを知るきっかけとなったというお話。



でもだって
知らなかった言葉が理解できるようになったら嬉しいじゃない!

だから多少得意気になっても許してほしいわ♪