北海道弁に生息する「さる」 | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

北海道に来て「?!」と思ったコトバはいろいろあるけれど
今やニンマリしてしまうレベルにまでなったのが『~さる』。

代表例は 『押ささる』

初めて聞いたときの違和感といったら、それはそれは半端なかった!

 「どうして『さ』、いっぱい言ってるの~?!」

 「『さ』が多い!多すぎる!!」

って。

 「押ささっちゃった!」 って、「押しちゃった」 でいいじゃん!!

 『さる』って何??!


最初は、特定の人のおかしな言い方なのかと思った。
でもそのうち、これが北海道弁なのだとわかってきた。

 こういうときにも使うのか~…

なんて思う一方で、イマイチその法則性がわからない。

何で『さ』を連発するのかもやっぱりわからない。


そんなとき、友人夫妻が実に簡潔に、明確に『さる』について教えてくれた。

『~さる』というのは、自分の意志ではなく
アクシデントのように起こってしまったときに使うらしい。

だから北海道人は
「あ!押ささっちゃった!」 とか
「撒かさっちゃった!」 とか言っている。

 なるほど~!!

それを知ったとき、何かがパーーーッと晴れたような気がした。

 コトバに意味が伴うって、こういうことか!

方言というものは、そこで育った人間にとっては
当たり前にそこにあるものだ。

そのコトバを使わない人間に指摘されて(質問されて)
初めてそのコトバの意味を考えるという。

そういうものを説明するのは難しい。

それを明確に簡潔に伝えてくれたあの夫婦はすごかった!



ある年の初め、夫の実家家族と共に食事に行った。
ちなみに夫も東京出身。

宴もたけなわ、最後に記念撮影をしようという話になり
ひとりの女性スタッフにデジカメを渡した。

 みんな集まって~!
 いい? 撮るよ~!

…なんていうところで、彼女が叫んだ。

「あ!押ささっちゃった!押ささっちゃった!!
 ごめんなさい。どうしよう…押ささっちゃった!」

その瞬間。


 ???

 ………。


みんなの頭の中は、一様にこんな感じになった。

「…押ささる…?」

義兄がポツリと呟いた。


そんな中、私と夫だけは
「北海道の方なんだね~」 とのん気に彼女を眺めていた。



そして今
私は叫べるようにまでなった。

「きゃーーーっ! バラ撒かさっちゃったーーーっ!!」


ちなみに、『押ささる』はパソコンで変換されない。

「面倒なんだよね(笑)」と言っていた友人の気持ちが
今日、このブログを書いて初めてわかった。

…っていうか、北海道人は書くときも使ってるのね(笑)