方言が苦手④~方言が怖い 2 | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

オーストラリア滞在中、街に慣れるためにと
最初のうちは語学学校に通った。

街に慣れるし友達もできるかな?
学生時代と違って英語の“勉強”も楽しめるかな?

なんて思っていたのだけれど、やっぱりダメだった。
どうも私は“言語を勉強して学ぶ”というのが苦手なようだ。

日本の英会話スクールでネイティブ講師の方々と話すのは
とても楽しかったのにな~。

やっぱり私は、言語に関しての“外側からのお勉強”には拒否反応が出るらしい。

だって全然、自分の中に入ってこないし
頭で必死に理解するだけで
日常の生きた会話力が劇的に上がるわけではなかったから。



さて、その語学学校のあるクラスに名古屋出身の男性がいた。
彼はそのクラスの中心的存在。
その場にあまり馴染めなかった私は、彼の言動にドキドキしていた。

そのクラスにはもちろんあちこちの国から生徒が来ている。
でも、日本人率は高かった。

あるとき、彼が言った。

「東京の奴らはさぁ、自分達が標準語を話してるって言うけど
 話してねーよ!
 標準語っていうのはNHKのアナウンサーが話してる言葉を言うんだよ。
 レストランに行って『スパゲッティ?』なんて疑問形で言うなっつの。
 あんなの標準語じゃねぇ!」

いやいやいや…

確かに当時、語尾を上げて疑問形のように話す若者が話題(問題)になっていた。
自分の意志で注文するのに、何故疑問形なのか。

そりゃそうだ。

でもそんな話し方、多くの東京人はしない。
メディアで話題になっていたのは、
主に当時の女子高生の間で流行っていた話し方。

それを彼は、東京の人間すべてがああいう話し方をしているのだと思ったのだろう。


 いえいえ、私たちは標準語を話しています。

 NHKのアナウンサーと同じです。

 語尾を上げて常に疑問形で話す子たちの話し方は
 私だって違和感を覚えます。


私は心の中でそう叫んでいた。

でもその時の彼は“標準語”を話すという“東京の人間”に対して
明らかな敵意を表していた。


 怖い…

 とても怖くて言えない…

 伝えたら、10倍くらいになって返ってきそう…


こうしてまた、私の『方言が怖い病』に拍車がかかってしまったのだった。

   >『方言が怖くない!』へ続く