怒鳴り声が教室に響く。
私は体を萎縮させ、涙をこらえる。
怒鳴られているのは私ではない。違う生徒が立たされ、一方的な理由で教師に怒鳴られている。
しかし私は懸命に涙をこらえ、体の震えを止めようとしている。
教室から逃げ出したい。時間を見ると、後十分は授業がある。
呼吸が荒くなる。
まだ教師は怒鳴っている。その生徒だけではなくもう一人の、男子生徒まで立たせ、
意味不明な言葉を連呼し、青筋を立てている。私は他の皆と同じように教科書に集中する。
目は文字をすべり、頭に入ってこない。
動悸が激しい。倒れてしまうかもしれないと思ったとき、
「もういい!!お前らには愛想が尽きた!!!!!!」
教師はそう叫ぶと教室を出て行った。
私は息をゆっくりと吐いて、前を向く。
良かった・・・倒れてしまうところだった。
二人の立たされた生徒に慰めの言葉を、他の生徒は話していた。
確か・・一人目が怒られた理由は・・・
チラッと、私は黒板を見る。数学の式が書かれている。
黒板の中間位置に書かれている式はあっている。
だが、
「何だこの書き方は!!私を馬鹿にしているのか!!!」
そう言って怒鳴ったんだ。
確かに少し右上がりになっているが、気にするほどでもない。
二人目はいつもとばっちりをくらう。
あの数学教師に気に入られて無いらしく、ことあるごとに怒鳴られている。
「千鶴・・大丈夫?」
「え・・・あ、大丈夫。だいぶ治まってきた。」
秋穂が心配そうに寄ってきた。
秋穂とは幼稚園から一緒の幼馴染で、私の症状のことも理解してくれている、良い親友。
私は秋穂の方を向くと笑顔で言った。
「まったくネズミ男の奴!ま~た職員室かよ!」
「困るんだよな~つうか理不尽すぎるしよ。」
近くの男子生徒が苛立ちながら話している。
ネズミ男とは、数学教師、坂野先生のことで、顔がネズミっぽいのと、権力のあるものにゴマをする、
卑怯なところがあるからネズミ男。こうして職員室に行かれることが何度もある。
最初のうちは皆放っておくんだけど、そのうち真面目な子たちが結局謝りに行く。
私も秋穂も一度嫌々ついていった事がある。
その時も私達が一方に怒られ続け、ひたすら私達は謝り続けた。
ちなみに、その時の出て行った理由はチョークが短いのしか無かったから。自己中。
でも、その日は時間も少なかったせいか誰も行かなかった。
次の時間は生徒集会。うちの学校は転校生が多いときは集会で紹介する。
本当なら朝礼に集会なんだけども、制服の発注ミスで授業時間を潰すことに。
次の時間、本当は体育だったから別にいいけど。
ホールに学年ごとに並ぶ。体育教師の小鹿野が声を荒上げている。普通に言えばわかるのに。
校長が前に進み出ると、自然と静かになり、校長はそれを確認するとマイクで話し始めた。
「え~皆さん。今日は我が校に六人の転校生がやってきました。各学年二人ずつです。
それじゃあ、一人ずつ、名前と学年と所属するクラス名を。」
一人ずつマイクの前に立ち、挨拶をしていく。
三年から、二年、そして私達一年に来る転校生の番になった。
背の高い男の子がマイクの前に立つ。
「秋岡陸。一年三組。宜しく。」
あ、私のクラス。でもそっけないあいさつだったな。
それでも、周りの女の子達は大騒ぎしていた。
だって彼、美形だったもの。お決まりのように周りの女の子達は騒いでいたけど、私は別に何も思わなかった。
恋愛とかあまり興味ないし。
そう思って前を向くと、列に戻る彼と目が合った。
するとニコッと彼が笑ったから、私は少し首を傾げながら笑顔を返した。
教室内に戻ると、担任で国語担当の野中先生が秋岡君をつれて入ってきた。
「じゃあ秋岡の席決めるけど・・せっかくだから席替えするか!」
一気に教室内が騒がしくなった。早速クジを作って引いていく。
やった。窓際の席だ。うちのクラスのルールで、クジを引いた後、縦の列だけ自由に決めていい。
「私どこでも良いよ。空いているところで。」
「じゃあ一番後ろ良い?」
素敵な席をありがとう。あ、秋岡君隣の列みたい。
「ねえ~秋岡君、私の隣に・・・」
「俺一番後ろで良い?」
「ん?ああ。いいよ。」
姫野さん可愛そう・・・
ん?一番後ろって・・・・・
私は隣に来た人を確かめる。
彼は又私を見て笑いました。