YOUTUBEみてると、よくハウスやテクノの曲をヴィンテージ機や現行機で再現してる映像をみますが、たまたまかつての名機が実際にどの曲に使われてるかっていうのが出てきました。

 私が1990年代半ばにアキバやシモキタの中古電子楽器店を覗いてた頃は、モーグのミニモーグやシーケンシャル・サーキットのプロフェット5といったアナログ・シンセの名機の中古相場は35万から45万円くらいだったと記憶しています。手が出る範囲のものは、ローランド・JUNO106とかで、これは10万円しなかったはず。この機種は80年代のシカゴ・ハウスの定番機種だし、サラリーマンになってから訳アリ品を7万以下で買った記憶があります。

 

 あの頃、ハウスの人はともかく、テクノの人は「デジタル・シンセじゃダメでアナログ・シンセじゃなきゃダメだ」ってこだわりがありましたよね。

 ただ、80年代からすでにメジャーな音楽シーンではデジタル・シンセが多用されてたようです。

 

●ヤマハ・DX7

 1983年発売。世界初のフルデジタルシンセだそう。FM音源形式だということは知ってるんですが、それが何かは知りません。私の記憶では、1990年代半ばの『サンレコ』や『GROOVE』なんかの記事で「エレクトリック・ピアノの音色は本物以上と評価されて多用された」とかって記事を読んだ記憶があります。

   a-ha - Take On Me(1984年)

   a-ha - Take on Me Lead Synth (Exploring the Yamaha DX7)

   a-ha - Take on Me Bass Synth (Exploring the Yamaha DX7)

 この曲がDX7を大々的に使った代表例なんですかね。いかにもな80年代的デジタル・サウンドですね。関係ないですが、ウチの高校の新体操部は放課後の練習開始時にこの曲で慣らしやってて、レオタードの子たちを見てました。すぐに飽きましたけど。

   Top 16 Greatest Intros and tunes on Yamaha DX7

 DX7による有名なイントロの紹介。

   Kenny Loggins - Danger Zone(1986年)

 映画『トップガン』のテーマ曲ですね。なんとジョルジョ・モロダー作曲だそう。

   Sade - The Sweetest Taboo(1985年)

 シャーデーの名曲/代表曲ですね。このシックな音色はデジタル・シンセだったのか・・・

 

●コルグ・M1

 1988年発売。エフェクターとシーケンサーも内蔵。PCM音源だということは知ってますが、音って物理的には波形だから、各楽器の波形のサンプルをROM(つまり、データの書き換えはできない)に内蔵してて、それをパソコンでいうところのCPUというかサウンド・エンジンで演算してシミュレートするんでしたっけ? 90年代半ばの『サンレコ』なんかの記事で「プロが加工無しでそのまま使える音質だった」と高く評価されてました。私が若い頃は世界で一番売れたシンセだと言われてましたが、今はどうなんでしょうね? 90年代後半にコルグがトライトン・シリーズを出して、これは当時からヒップホップの人とかも使ってたはず。2009年でしたか「けいおん!」ってアニメをみたら、キーボードの子がトライトン使ってて「今でも続く人気シリーズなんだな」って思いました。

   Korg M1 Famous Songs and Sounds

 M1を使った代表例を紹介してます。

   Madonna - Vogue(1990年)

 決して高価な機種ではないんですが、マドンナの曲にも使われてるんですね。

   Queen - The Show Must Go On(1991年)

 これM1だったんだ! 驚きました。

   Crystal Waters - Gypsy Woman (She's Homeless)(1991年)

   CeCe Peniston - Finally(1991年)

 2曲とも広義のハウスですが、普通にデジタル・シンセが使われてるんですね。どちらかというと当時でもメジャー系を意識した音作りだったんじゃないでしょうか。

 

 M1ですが、調べてみると88年発売時の定価が248000円で、92年には定価が18万円になったそうです。ということは、たぶん250ccの中型バイクの新車買うより安いですよね。つまり学生でもバイトすればプロが使う機種を買えるようになったわけです。おそらくこの頃から電子楽器については、プロとアマチュアの機材の差はどんどんなくなっていったんじゃないですかね。

 

 ちょっと調べてみました。まずはサンプラー。アカイのS900が86年、S950が88年、S1000も88年。同じくアカイのMPC60が87年、レゲエの定番MPC60Ⅱが91年、ヒップホップの定番MPC3000が94年。同じくヒップホップの定番であるE-mu SP-1200が87年、当時の定価が2995ドルだそう。1987年の円/ドルのレートが1円≒144.6円くらいみたい。だから43万3千円くらい。まあサンプラーはさすがにシンセよりは高かったのかな。それでも車を買うよりは安いです。

 宅録ミキサーの定番、Mackie 1604は発売年や価格は分かりませんでしたが、96年までに10万台売れたそうです。宅録モニタースピーカーの定番、ヤマハNS-10が78年発売、後継機種のNS-10Mが87年発売だそう。

 

 それにしても、決して高級機ではないM1がマドンナやクィーンといった超大物のレコーディングで普通に使われてるんですね。そりゃ日本製電子楽器が世界市場を席巻するわけですね。でも、たしか90年代には赤井電機は香港資本に身売りしたんじゃなかったっけ?