なんと言っても表紙の女性のインパクトが凄い。
数多くの女性画を残した甲斐庄楠音の作。
解説を読むと、見るものを圧倒させるグロテスクな「でろりとした絵」を描くと、当時から一目置かれていたという。
この本にぴったりな表紙だと思った。
ホラー小説ではあるけれど、怪異の類はどちらかといえば脇役。
本当に怖いのは人間の中のドロドロとした怨念、恨み、執念。
4篇からなる短編集だけど、幸せな人は1人も登場しない。
皆、貧困、病、差別、男女のもつれなどで恨みつらみに身を焦がしている。
一番ゾッとしたのは「あまぞわい」
いくら恋しい相手でも、あのように追い詰められたら正気を保てるか自信がない。
「密告函」も異なる意味で恐ろしすぎる。
奥さんを大事にしないと大変なことになるよ…
もしかしたら、共感する人もいるのかも
まさしく「ぼっけぇ、きょうてえ」(とても、こわい)だ。