生きてさえいれば。
他の道もあったのに。
違う道もあったはずなのに。
自ら命を絶ったものは
他の道も
違う道も
考えなかったのでしょうか。
私の家族に限って言えば
他の道も。
違う道も。考えて
考えて。
思いとどまり。
それを繰り返した
果てであったのかもしれません。
「遺されたものが
どれだけ哀しみ苦しむか
知っているのに」
弟の他界後
事あるごとに母親から
その台詞を聴かされました。
聴かされるたびに
すぅと
冷め離れていくものがありました。
それは逆に
弟の心情に近づく感覚でもありました。
あぁ。この人には
間違っても
死にたいなどと言えない。
私の背景を御存じでない
初対面の方から
「今まで何でも
自分ひとりでやってきたと
思っているでしょう?」と
痛いところ突かれたことがあります。
私の話の節々に
傲慢さが垣間見え
戒めに発したのかもしれません。
返す御言葉もありません。
初めから何でも
ひとりで出来たわけではありません。
ひとりで出来るまでに
育てられたのです。
このクソみたいな世界に。
自分が見たいものを
見ようとしていました。
知りたいことを
知ろうとしていました。
見たいものを
見れる自分に
なること。
知りたいことを
知れる自分になること。
私の手が汚れていたのです。
手垢だらけの
汚れた手で
雲を握ることも。
星を掴むことも。
月を撫でることも
赦されず
君たちの死に触れることも
できなかった。
「もの狂いとなった人の魂は
この世の体制の中にはおさまらない。
だからこそ
この世ならぬ世界を求めて
ふらふらと
さ迷い出していく。
つまり
さすらいとは
この世の規範から外れた世界を
生きることであり
その姿はこの世ならぬもの
つまり異形〈いぎょう〉のものだった」
~もの狂いの人々~ 小林とし子
何かに取り憑かれたように
死に物狂いだったね。
お母さん。
あなたも
死にたい。と言えなかった。
だから
死にます。だったのでしょうか。
遺されたときも。
遺していくときも。
心の臓をえぐられ
身を切られる想いであったことでしょう。
人間が嫌いなのは
そのイキモノと同じ血が流れていると
思うと
人間をやめたくなる瞬間が
襲ってくるからかもしれま
ただ。
人間は嫌いですが
君のことは好いています
端から見れば
幸せそうな家族の光景。
彼らは
「まだ」経験していないだけ。
それは
いつ。誰に訪れるか
わかりません。
これから経験するかも
しれません。
そう思うと
その光景が
千五百秋(ちいほあき)続いてほしいと
願う自分が在ることに気づき
なんだか
無性に悔しくて泣けてくるのです
まだまだ私も甘いな
他者と比べ
妬み。僻み。
私を苦しめていたものの正体。
そう。
君たちの死ではなかったね。
いま。
君たちが悔やんでなければいい。
やり直すことも
生き返る術も持たない者たちにとって
それほど酷なことは
ないでしょう。
最後まで読んで頂き
ありがとうございます
化けの皮が剥がれるのを
何度も目にしてきました。
化けの皮を剥がすことができる。
私の古へ語り(いにしへがたり)
言わぬが花。
知らぬが仏。
両手で抱えましょう。
実のならない仇花(あたばな)を。
剥いだ皮。
纏って
お輿入れ。
地獄への嫁入り道具。
その日が待ち遠しく
恋焦がれ。
恋するオナゴは
可愛くなれると申します
上司の出所祝い
(定年退職とも言いますね)
高額な
コンパニオン代を請求したのは
言うまでもありません
自分で自分のケツを叩いて
這い上がり。
突き落とされ。
また這い上がり
突き落とされ。
叩きのめされ。
(叩いてもホコリしか出~へんよ)
寄り添うなどと
たやすく言うなかれ
それよりも
あけるのが惜しいほど美しい夜。
可惜夜(あたらよ)を見ませんか。