横浜。
集団就職。
風呂無し。四畳半一間。
製紙工場。日給月給。父親。
市営団地。
内職。母親。傍ら。
姉弟。戯れる。
リカちゃんハウスも
ママキッチンも
雛人形も持っていなかったけれど。
暖かいものに
包まれていました。
父親も母親も。
小さな小さな幸せを
大切にしていました。
あの日まで。
あれから40年。
きみまろかっ
父親の自死をきっかけに
私達を取り巻く環境は
大きく変わりました。
後ろ指を刺され
白い目を向けられ。
自分で自分を憐れむ事は
悪夢への始まりでした。
目覚めても残夢。
日が昇れば白昼夢。
現実なのか。幻なのか。
胡蝶の夢。
母親が遺していった
数少ない物。
当時
目にした時は
怒りしかありませんでしたが
時を経て目にしたのは。
そこに在ったのは信頼。
「心頼」こころだのみ。
母親だから。愛した人だから。
2人が確かに
築き上げたものがあったから。
父親は
安心して母親に
任せていけたのかもしれません。
メモは。
私が初めて目にする
父親の免許証と一緒に
大切にしまわれていました。
何十年も。身を焦がすほど
恋い焦がれていたのですね。
もう1枚。メモを見つけました。
同じ年に書かれたものだと
思われます。
嘆き明かし
失意の底に沈み。
針の筵(むしろ)
塗炭の苦しみ。
彼方の世界に還る事で
救える命も。
彼方の世界に還る事でしか
救われない命も。
この世界に
確かに在るのです。
立派な人になれません。
善人にもなれません。
偽者じゃなきゃ
いっか
理不尽で不条理な
この世界。
真面目に一生懸命
頑張っても報われない事は
沢山あります。
それでも。
「ズル」はしたくないのです。
受け入れられない。
受け入れがたい。
ならば
受けて立ちましょう
死に方や時を
探している訳ではありません。
それは天に預けたもの。
この世界最期の時に
私の目の前に広がる世界。
憧れた世界。見たかった世界。
憧憬(しょうけい)を
探しているのです。
そうして私も。
黄泉之客となる。
私は
あの日
母親に挽歌を贈りました。
そんな私に
母親から最期に贈られたのは
餞(はなむけ)でした。
「早く全てを忘れて
前を向いて生きていってね」と。
最後まで読んで頂き
ありがとうございます
横浜みなとみらい。
「アニタッチ」
入浴後。
脱力
大きな体をしているのに
鳴き声は
随分と可愛らしいのですね