「機動戦士ガンダム水星の魔女」をNetflixで鑑賞（シーズン1＝全13話／2022年製作，シーズン2＝全12話／2023年製作）。

ガンダムといえば国家間の戦争もの当イメージだが，「水星の魔女」はまさかの学園ドラマ風だった。しかも超巨大企業同士の覇権争い（つまり経済戦争）が物語のバックボーンになっているという意外性。学園内で開催されるモビルスーツ同士の「決闘」はまるでカードゲームのようだし，主人公を含め女性キャラが中心的な役割を演じていたり，同性婚が当たり前になっているなど，極めて現代的な設定が散りばめられている点が興味深い。

何よりびっくりしたのが，モビルスーツ「ガンダム」の位置付けだ。ガンダムは人類の平和を守るための兵器ではなく，人の命の犠牲の上に成り立っている「禁じられた兵器」。多くの人々はガンダムに対して否定的な感情を有しているという前提は，かなり意外だった。ガンダムは「誰もが憧れて称賛する正義の味方」ではないのである。

次に物語について。ドラマティックなストーリーはなかなか魅せるが，正直言って斬新さや真新しさは感じられない。主人公のスレッタ・マーキュリーが乗るガンダム「エアリアル」の極めて特殊な設定は「エヴァンゲリオン」的と言えるし，そのスレッタの素性にしてもこの手の作品にはよくある話。とはいえ，だからといって「残念な感じ」がするわけではなく，たくみに「いいとこ取り」をして上手い具合にまとめ上げている印象を受ける。

学園モノの色合いが濃い前半のストーリーが良くできているのに対して，企業同士の経済戦争が主軸になる後半はさすがに少々キツイというのが正直な感想だ。10代の少年・少女が超巨大企業のトップを争う様は子どもが会社ごっこをしているようで，あまりに現実味に欠ける。スレッタが“姉”のエリクト＆母親プロスペラとの対立を解消するに至る過程も，あまり説得力があるとは言えない。