Part2 技術のマネジメント

5章 知識労働の生産性

 

20世紀におけるマネジメントの偉業とは、肉体労働者の生産性を50倍に上げた事である。

 

21世紀のマネジメントに期待される偉業とは、知識労働者の生産性を同じように上げることだ。

 

ヘシオドス、ヴェルギリウス、カール・マルクスも肉体労働と肉体労働者について書いたが肉体労働に従事した事はなく、機械すら触ったことはなかった。

 

◎テイラーの偉業

みずから肉体労働者として働き、肉体労働そのものを最初に研究した最初の人が、フレデリック・テイラーだった。

 

それ以前の長い歴史において、労働者自身がより多くを生産する方法は、より激しく働くか、より長く働くしかなかった。

 

テイラーが肉体労働に関心を持ち、研究を行なった10年後には、彼のおかげで肉体労働者の生産性は大きく伸び始めた。

 

テイラーの偉業は20世紀における経済と社会の発展の基盤となった。

肉体労働の生産性の飛躍的な向上は、いわゆる先進国経済を生み出した。

 

テイラーよりも前に、先進国なるものは存在しなかった。

 

今日の途上国さらには新興国とは、肉体労働を十分生産的たらしめていない国、あるいは少なくともまだそうし得てない国のことに他ならない。

 

◎テイラーの手法

 

はじめに仕事を個々の動作に分解する。

 

次いで、それらの動作に要する時間を記録する。

 

次に無駄な動作を探す。肉体労働の仕事を分解するならば、それまで絶対としてきた動作の多くが無駄で役に立っていないことが明らかになる。

 

次に、不可欠なものとして残った動作を短い時間で簡単に行えるようにする。それらの一新された動作を組み立て直す。

 

最後の仕上げとして、それらの動作に必要な道具を作り直す。

 

◎仕事に知識を適用した最初の人

 

仕事を分析したテイラーが発見したものは、歴史家や思索家が口にしていた事と、ことごとく反していた。

 

職務拡大、職務充実、多能化のいずれもが働く者の疲労を防ぎ、生産性を上げるために彼の手法を使った。

 

◎アメリカ生まれの哲学

 

テイラーの科学的管理法とインダストリアル・エンジニアリングこそが、世界を一変させたアメリカ生まれの知恵。

 

◎知識労働の生産性を上げる六つの条件。

 

肉体的な動作を伴うテクノロジストによる知識労働は膨大に存在する。

 

先進国における課題は、もはや肉体労働の生産性の向上ではない。

すでに、我々はその方法を知っている。

 

これからの中心的課題は、知識労働者の生産性の向上である。

 

知識労働者の生産性を上げる主な6条件。

 

仕事の目的を考える。

 

働く者自身が仕事の生産性の向上に対して責任を担う。自らマネジメントする。自立性を持つ。

 

③継続してイノベーションを行う。

 

自ら継続して学び、人に教える。

 

知識労働者の生産性は量よりも質の問題であることを認識する

 

知識労働者は、組織にとってコストでなく、資本財であることを理解する。

 

6番目の条件以外は、肉体労働者の生産性の向上のための条件とはちょうど逆である。

 

◎仕事の目的

 

知識労働で重要なのは仕事の目的である。

仕事は何か、と言う事である。肉体労働と違ってプログラム化はされていない。

 

確かに、患者が意識不明に陥った緊急時に看護師が行うべきことは、あらかじめプログラムかされている。

しかし日常において、患者の面倒を見るか、事務処理をするかを決めるのは看護師自身である。

 

今日多くの知識労働者が、本来の仕事を放り出して書類を書いたり、書き直したりしている。

あるいは会議への出席を求められている。

 

知識労働の生産性を上げるために最初に行うことは、行うべき仕事の内容を明らかにし、その仕事に集中し、その他のこと全て、あるいは少なくとも可能な限り、無くしてしまう事である。

 

そのためには、知識労働者自身が、自分の仕事は何であれ、何であるべきかを明らかにしなければならない。

それができるのは知識労働者自身である。

知識労働の生産性の向上を図るには、知識労働者に対し、なすすべき仕事は何か、何でなければならないか、何を期待されているか、仕事をする上で邪魔なことは何かを問うことが必要である。

 

A)仕事が何かが明らかになればB)続くその他の条件に取り組むことも容易になる。

 

◎仕事の質は何か

 

仕事の質は何か?、この問いの本当の問題は、仕事の質の測定にあるのではない。

そもそも仕事が何であり、何でなければならないかを明らかにできないと、時に大きく意見が分かれることになる。

 

ほとんどの組織にとって、またほとんどの知識労働者にとって未経験の新しい課題である。

その上、答えを得るには議論を必要とする。

しかも意見の対立は避けられない。

 

◎資本財としての知識労働者

 

コストは管理し減らさなければならないが、資本財は増やさなければならない

 

知識労働者は生産手段を所有する。

頭の中にしまい込んだ知識は持ち運びできる。

まさに生産手段を所有するからこそ、彼らの流動性は高い。

 

◎先進国にとってはテクノロジストが鍵

 

極めて多くの知識労働者が、肉体労働と知識労働の両方を行う。

そのような人達を特に、テクノロジストと呼ぶ。

 

◎テクノロジストの先駆け

 

◎どこから手をつけるか

 

◎先進国の条件

 

◎マネジメントの見直しの必要性

 

法的な所有者の利益とともに、知識労働者すなわち組織に富に創出能力を与える存在としての人的資源の利益の観点から、雇用主としての組織とそのマネジメントを見直さなければならなくなる。

 

資本でなく、知識労働者が統治の主体となった時、資本主義は何を意味することになるであろうか?

知識労働者が、知識を所有するが故に唯一の資本財となったとき、自由市場とは何を意味することになるのだろうか?