リーマン仕事を、定時でばっちり切り上げる。その足で、六本木ヒルズにある森美術館へ。目当ては、ル・コルビュジェの展覧会。ル・コルビュジェは、20世紀初頭から半ばにかけてフランスを中心に活躍した建築家です。安藤忠雄が、「彼を知ったことが建築家をめざすきっかけになった」と、自分の著書で書いています。そんなこともあってか、今、日本でも、知名度の高い建築家なのではないでしょうか。今回の展示会では、建築作品だけでなく、絵画、家具、彫刻等、彼が創作した作品が幅広く展示されています。彼の創作は、建築ではなく絵画から始まりました。最初は、三角、四角、丸といった、幾何学的な形状を使って、シンプルな絵画を描いていたようです。しかし、描画のスタイルは、けっして一定ではなく、様々な観点から創作を試していたようです。そのような創作姿勢を経た後に、複雑な形状を描いてみたり、独特の手法を作品に表現していく。この姿勢が彼の創作精神を欲表しています。描かれた意味が理解できない絵も多かったのですが、今思うと、実は、彼自身も試行錯誤の段階だったのかもと勝手に想像。建築に注力しはじめてからも、その精神は揺るがなかったのでしょう。会場でBGMとして使われていた、エリック・サティのピアノソロ曲から、ふと、「建築のような音楽」という彼の言葉を思い出しました。音楽と建築って、共通するところがあると思うんですね。キーワードは「数学を背景とした規律」「全体と部分「空間芸術」「人間生活との関連性」かな。最後の「人間生活との関連性」については、前から頭にあったテーマだけど、この展覧会でまた深く意識することに。建築も音楽も、古来から、人間の生活に深く関連している。また、様々な創作家たちが、人間が人間らしくよりよく生きるためにはというテーゼに対する提言を込めて、ひとつの作品を作り上げてきた。その魂は、時をこめて綿綿と受け継がれていくだろう。しかし、現代を、そしてこれからを生きる人間は、その意味をどこまで理解するのだろうか?その問いに対しては、自分自身を含め、一抹の不安を感じるのです。