「指揮台の神々」ルーベルト・シェトレ著を読みました。
先に読んでしまった続編の「舞台裏の神々」に比べて遥かに
分厚く内容も充実していました。ラトルがベルリン・フィルの
シェフに選ばれた頃に書かれたもので2003年1月に日本語版が
出版されています。
専門の指揮者と言う出現から現在おかれている状況について、
13人の大指揮者を個別に取り上げながら述べています。
13人の指揮者とはハンス・フォン・ビューロー、ハンス・リヒター、
ニキシュ、マーラー、トスカニーニ、ワルター、クレンペラー、
フルヴェン、クナ、ベーム、カラヤン、バンスタ、ラトルです。
個々の指揮者に関する記述よりも、彼らを通した作曲家と指揮者
との力関係の変化、聴衆の意識の変化など興味深く読みました。
”作曲者自身の手で指揮される新曲を聴くため”と言う演奏会の目的が
作曲家がオケの指揮を職業的な指揮者に委ねた時、指揮者の「解釈」が
前面に出てきて、今では作曲家が指揮者に従属してしまったと
述べています。
聴衆の意識も音楽の本質を共体験しようとするよりも音楽の表面的な
知識を漁ったり、作曲家の伝記的な知識、演奏者の演奏について
さまざまな演奏との比較によって判断するようになった。心地よく
メロティの美しさにうっとりなれる演奏会は売れる、不協和音やリズムの
複雑な音楽を避けてしまいがちと 本を読んでいる自分が反省させられる
事が書いてあります。
既に同書を読まれた方も多いと思いますが、機会があればご一読を
お薦めします。図書館から借りたのですが、この本は持っていても
良いと思っています。