昨日、とても不思議な夢を見た。

僕はひとりぼっちで街の中に立っている。ここは電脳世界に造られた【エレクトロ・ワールド】だ。

なぜか僕にはとある指令が託されている。この【エレクトロ・ワールド】を作り直す為に磁力を発生する“鉄球”が装着された移動式クレーンで建物を壊す事だ。



磁力を帯びた鉄球を建物にぶつけると『バッカーン!』と破裂して飛び散る。ただし飛び散った破片はドットになって消えて行く。なるほど、だから電脳世界というわけか…(苦笑)

僕は夢中になって【エレクトロ・ワールド】を破壊していく。

1つの区間をすっかり綺麗にイレイザー(消去)して、次の区間にクレーンで移動していると、前方50m先の道路の左側の歩道を歩く誰かの後ろ姿が見えた。

『あれ?この街にはもう誰もいないから好き勝手に壊していいと聞いていたのに?』

よくよく見れば女の子ぽい。ポニーテールにくるぶしくらいまであるロングスカート。

思わずハッと息をのみ思い切り目を凝らした。その後ろ姿に強烈な見覚えがあった。



『りっちゃん!りっちゃんじゃないか!なんでこんな所に!?』

僕はクレーン車を最大スピードに上げて前を歩いていたりっちゃんに追い付いた。そして脱兎のごとく運転席から飛び出して、りっちゃんの横に駆け寄った。

『りっちゃん!どうしたの!?こんな所に一人で!』

りっちゃんはちらりとこちらを見たが、また何事もなかったかの様に前を向いてスタスタと歩き出した。

『りっちゃん!どこ行くの!この街にはもう誰も住んでいないよ!一旦リセットして消えてしまうんやで!りっちゃん!』

速い。歩いている筈なのに、僕が全力で走るスピードよりも速くて追い付けない。

『りっちゃん!僕と一緒に元の世界に帰ろう!みんな…みんな待ってるから…!!』

りっちゃんが左の路地に曲がる。僕もすぐに曲がったのに…彼女の姿は忽然と消えてしまった。


『りっちゃ〜ん!』『りっちゃ〜ん!』


りっちゃんの名前を叫ぶ僕の大声だけが虚しく響いて路地に吸い込まれていくだけだった。


彼女はこんな誰も住んでいない世界にひとりぼっちで暮らしているのだろうか…?


これは僕の夢の話です。りっちゃんは今、何をしているのだろうか…