母は今年84歳になった。

えっ?と驚くくらいのスピードで、その老いが進行しているように感じる。

86歳の母を持つ友人は「80を過ぎると、一気に来るわよ。そして85を過ぎると、そのスピードはさらに加速するのよ」と言う。

確かに、今年に入ってからの彼女の「老いのスピ―ド」には、驚かせられることばかりだ。

加えて、本人の自覚がないことが、これまた大問題なのである。

1 人の話を聞かない。

2 自分の言いたいことだけをしゃべり続ける。

3 繰り返しが多い。

4 物忘れがひどい。

5 ものの食べ方が汚い。

6 耳が遠くなったせいかテレビの音が大きいことと言ったら・・

7 時々食器を洗ってくれるのはありがたいが、汚れが殆ど落ちていない。

8 ガスの火を消し忘れる。(が昨今のガス機器は非常に優秀だから、消し忘れても自動的に止まるという大変ありがたいものになっている)

9 行動が全て雑。ゆえに最近の食器の欠け方と言ったら半端ではない。

がしかし、しかしである。

かくいう私も今年還暦。

物忘れもするし、「お母さん、その話は前にも聞いたよ」と

息子に指摘されることも一度や二度ではない。

人のふり見てわがふり直せ。

昔の人は本当によいことを言ったものだ。

最近では、のちのちの自分のために「老いを迎えた自分に」

と題したノートをつけるようにしている。

母の行動を見ていて、「老いたらこんな風になる」という事象を

書き留めているのだ。

84歳の母は、実母ゆえ、こちらも時々は遠慮なく言わせてもらう。

が、さすがに「お母さん、食べ方が汚いわよ」と言うのは

はばかられるので、母が日に5時間は見ている韓国ドラマを時々

「お供視聴」しながら「こんな食べ方はダメよね~お行儀悪いわ」

などど、画面の人にかこつけて、遠回しに言ったりする(韓国ドラマの中の登場人物が皆そんな食べ方をしているわけではありません。たまたまです。あしからず)も、当の本人は「ほんとに、や~ね~。食べ方の汚い人とは一緒にゴハンしたくないわ~」などとおっしゃる。

そして、そんな場面を見ながら、いっぱいお菓子をほおばった口を開けたまま、しゃべりまくるのであります。

母は持病があるので、特に最近では、長い距離を歩くと息苦しくなると言う。

本当はゆっくりと少しずつでも歩いて欲しいから、天気の良い日には「美術館でも行こうか」とか、近くにできた菓子店に「ソフトクリームでも食べに行こうよ」などと誘ったりもするのだが、「息が苦しいから無理」との理由で即刻私の提案は却下される。

 

同居を始めてやや1年になるが、我が家の冷蔵庫を見ては、「この家には食べるものがない」と仰り、バスで近くのスーパーに出かける。

食べきれないくらいの買い物をし(最近のスーパーは高齢者への配達を無料で行ってくれる)ご帰還。

「なんだ、歩けるじゃん」と心の中では思っても決して口にすることなかれ。

やれやれ、こんな調子で、果たして私自身もストレスに押しつぶされたりしないかしらん?

 以前、実母と一緒に暮らし始めたママ友が、ご母堂についてのご不満をあれやこれや私に話したことがある。

その時の私は「それくらい許してあげなさいよ。大したことじゃないわよ~」なんて軽く彼女の肩をたたいたりなんしたものだが・・そんな彼女は後にストレスが原因の極度の頭痛で悩まされた。

彼女がことあるごとに言っていた「一緒に暮らした人にしかわからないわよ」という言葉の重みを、私は今日もひしひしと感じているのであります。