手術室には10人ほどの先生がいたようです。

みんな青い帽子、マスク、手術着で部屋はみんな銀色で冷たい感じ。

なんだか宇宙ステーションみたい・・・と思いました。


背中に麻酔を打たれ、陣痛の痛みも体の感覚もなくなりました。

冷たい金属を握らされて

「今これ、冷たいって感じますね。ここはどうですか?こっちは感じますか?」

と体に金属を当てているようです。

胸から上は冷たいと感じますが、それ以外はなにも感じません。


頭にシャワーキャップをかぶせられ、口には酸素用マスク。

テレビで見るのと同じだ!


両手を広げ、十字架に掛けられたような形で体を固定され、

胸の上にカーテンを掛けられました。

上には手術用の大きなライトがつけられ、手術開始です。


部屋の中はタイタニックのテーマが流れていました。

両手を広げて、あのタイタニックのポーズじゃない?

なんてこと考えていました。


そんなに長い時間ではなかったと思います。

医者の一人が私の胸を心肺蘇生のようにガンガン押して

すぐに「オギャーオギャー」と産声が聞こえました。


「生まれましたよ、おおきなオチンチンついてますね。」

「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。8時6分です」

「体をきれいにしたら連れて来ますからね」

手術にかかわった先生たちが口々におめでとうと言ってくれます。


「オギャー!がらら、オギャー!ごごご」

ベビーは口の中にたまった羊水をバキュームで吸い取られているらしい。

ものすごい元気な泣き声でバキュームに抵抗してるよう。


嬉しいとか、感動的ということはなく、カーテンの向こうで起こってることが理解できない。

それでもなぜか産声をきくと涙がぽろぽろ流れました。


看護婦さんに涙を拭いてもらい、左腕に固定したバンドをはずされて

ベビーとご対面。

真っ黒な髪と、真っ赤な体、それにとんがった頭。

「産道にはさまっていたので、頭がとんがってますけど、じきになおりますよ」

と看護婦さんが言いました。

おにぎりみたいな赤ちゃんでした。

体を震わせて大声で泣いています。

そっと足の裏に触ってみました。

しっとりとして温かい足の裏でした。

最初に思ったのは「誰に似てるんだろう?誰にも似てないな」


ベビーはすぐに連れて行かれ、私は再び腕を固定されて

縫合の処置がされたようです。


医者は自分の担当が終わると、一人、また一人と手術室から

「お疲れ様、お先に」と言って出て行きました。

ベビーが出てくるより、縫合にかかる時間の方が長かったような気がします。

ライトが消され、ストレッチャーに乗せかえられて

産科病棟に戻されました。


ベビーが生まれたらカンガルーケアをしたかった。

胸の上で抱きしめてあげたかった。

だけどそれが出来ず、知らない人に連れて行かれてしまった。

生まれる瞬間さえも感覚が無かった。

本当に自分から生まれたんだろうか?さっき見たのは私のベビーなんだろうか?

今はベビーよりも相方に会いたい・・・


続きは明日