2年ほど前、たまたま入ったお店がかけていたラジオで預金連動型の住宅ローンのことを知りました。預金残高と同じ金額までは金利がかからなかったり、低い金利しかかからなかったり、金融機関によって多少違いはあるものの、非常にお得な住宅ローンなのではないかと当時は思いました。


でも最近では一概にそうとは言えない。いくつか思わぬ落とし穴があると感じるようになりました。

なお、今回は東京スター銀行を例にとってお話しします。僕がラジオで耳にしたのもこの銀行のものでしたし、しばしば広告を目にすることもある為、とりあえずこの銀行のスターワン住宅ローンを例にとるのがわかりやすいと思うからです。


まず第一にこの住宅ローンと連動する普通預金は金利がゼロなのです。そして第二に預金額が増えれば住宅ローンの金利負担は減るけれど逆に預金額を減らしてしまうと金利負担が増えてしまうのです。


この住宅ローンを選んだ人はほとんどの場合金利支払額がゼロになることを目指してこの預金口座にお金を集中してしまうと思われますし、だとするとこれらの落とし穴は更に大きなものになると思われます。


勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな(光文社新書刊)』では
・預金資産はインフレで増えるどころか目減りしていく(預金の価値減少)
・他の資産運用をしていれば得られたはずの利益を失い続けていくことにもなる(逸失利益の増大)

と言うようなことも書かれている訳ですが、この預金口座にお金が集中していると預金額が大きい分、預金の価値減少も逸失利益の増大も大きくなります。


また、この預金を取り崩すとローンの支払金額が上がってしまうと思うとおちおちおろすことも出来ないかもしれませんし、金利が上昇してこのローンと連動する金利のつかない口座にお金をおいておかないで他の資産運用をしようと思っても、「でもローンの支払金額が上がってしまう」と思ってしまい、実行できなかったりするというような機会損失も考えられると思います。


それらのことを考えると、このローンは

少しでも金利負担を減らしたいと切実に考える一般的な収入の世帯向けと言うよりは、実質損かもしれないけど、それでも預金という形でお金を手元に残したいし、実質的な損も充分に我慢できる富裕層向けなのかもしれません。


本当の意味で、もっと庶民に優しい住宅ローンがあればいいのにと、FPの僕は時々思ってしまうのでした。

勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな』と言う本に「タダ飯はない」と言う言葉があります。結果的にハイリターンをあげることの出来た金融商品があったとしても、それは高いリスクを冒しているからこそあげられたものであって、一つ間違えれば大損になっていた可能性があります。何のリスクも冒さずにおいしい思いなんて出来るはずもないのです。ある意味、高いリスクを冒した報酬が高いリターンとも言えますが、リスクを冒してもリターンを得られる報酬なんて何処にも無いですしね。


世の中のどこかに絶対確実な投資先があるんだったら、資産運用なんて簡単です。ファンドマネージャーのような運用のプロの存在なんか必要なくなりますし、将来のお金の心配なんかする必要がなくなってファイナンシャルプランナーだって全員失業しますよ。運用に失敗して破綻する生命保険会社もなくなるだろうし、国民年金だってどれほど未納者が多くても運用益が莫大だったら全く問題ないですよ。でもそんなことはないでしょう?


それを踏まえて考えると最近のエビ養殖詐欺事件なんて明らかにおかしいですよね。出資者はただ養殖の成果があがるのを待つだけだとすれば、何のリスクも冒していないことになります。にもかかわらず「1年で2倍になる」なんて、それはどんだけのハイリターンなんですかっていう話です。


資産運用ではリスクやコストはつきものです。無駄にコストをつぎ込んで騙されてしまうリスクや大損してしまうリスクを背負うより、勉強する時間や労力といったコストや専門家の意見を聞く為にコストをかけて欲しいとFPの僕は思うのでした。



とある家のお話です。


Kさんのおうちは長男(27) 長女(24) 次男(17)の5人家族。自宅は一戸建ての持ち家ですが築30年。だいぶ痛んできていました。

その頃世はまさにバブル景気の真っ最中。Kさんもそれに背を押されるように改築を決意しました。

次男の「僕、今年は大学受験なんだからそれが終わってからにしてよぉ」という抗議の声ももはや耳に入りません。むしろ「うるさい。お前たちの為なんだから文句なんて言うな」と黙らせてしまいました。


建築工事はT建設にお任せしました。あまり聞かない名前の会社でしたが、100年たっても安心の家造りとか言う触れ込みだったのと、見積もり費用が無料だったことからそこを選びました。


着工は5月。完成は12月の予定でしたがなかなか工事が進みません。当時は建築ラッシュの真っ最中だったので、大工さんの手が足りないらしいのです。結局翌年4月にやっと完成し、完成が遅れて余計に必要になった借家の家賃は建設会社に負担してもらいました。


よく考えてみると、部屋にはエアコンも必要です。5LDKなので6部屋分・・・。それだけでも100万円かかりました。


家が建って5年後、長女が結婚し家を離れることになりました。8年後に奥さんが亡くなり、10年後には長男が結婚し、会社の近くに部屋を借りて住むからと家を出ました。


15年後、家の外装の塗装がはがれてきました。建築会社に文句を言おうとしましたが、その会社はバブル崩壊後の不況で既に倒産していました。仕方なく近所の工務店に塗装工事を依頼し、200万かかりました。


20年後の今、次男は思うのです。「この家ってフルに使われていたのって姉が結婚するまでの5年だけなんだよね。その後はどんどん使われない部屋が増えていって・・・。果たして本当にあのタイミングでこれほど部屋数の多い家に改築する必要ってあったんだろうか・・・」


この次男って僕のことなんですけどね。

何か本当に間違いだらけの家造りって感じの話なんですが、ほとんど実話なんですよ。


家は本当に人生最大の買い物だし、持ち家にするか賃貸に住むかだけでもライフスタイルが変わってきてしまう。いろいろと勉強したり、人に相談したりして、間違えのない家造りをして頂ければ何よりですと、FPの僕は思うのでした。