ウィザードリィ世界では、時折『友好的なモンスター』とのエンカウントが起こります。格下のモンスターが友好的な場合は自分たちの属性にふさわしい振る舞い(善の場合は見逃す、悪の場合は戦う)を容易に選択できますが、格上だったり、倒すのに骨の折れたりするモンスターが友好的な場合は、自分たちの属性的にまずいとは思っても見逃したくなったりもします。そして、そうした場合、稀に厄介な事態になることも…。

 

エギル「おい、クライン、また友好的なモンスターを見逃したな!うちのパーティーメンバーの半数は属性が悪なんだ。そんなことばかりやってると、最悪属性が反転して善になってしまうぞ!」

クライン「いやあスマンスマン!でもよぉ、さっきの奴らは倒すとなると相当のダメージを覚悟しないとなんねーし、長い目で見れば見逃した方がプラスなんじゃねえかって気がしてよぉ!」

シリカ「でも、それって何がマズいんでしたっけ?別に今は悪専用の装備(裝備している者が善になると呪われてしまう)を身に着けてる訳でも無いし、特に問題は無いんでは?」

エギル「極稀に厄介な事態になると情報屋のアルゴに言われていたが、詳しくは聞かされてなかったような…。だが、危険を敢えて冒す必要は無いしな」

クライン「だから悪かったって!次からは気をつけるからよ!」

エギル「マジで頼むぞ!」

 

そうして、友好的なモンスターとの遭遇後、最初の一歩を踏み出したその瞬間、体全体に響くような大音声が辺り一帯に鳴り響いた。

 

「ここは汝らの立ち入れぬところ!立ち去るがよい!!」

 

気がつくと、パーティーメンバーたちは迷宮から追い出され、街中に転移してしまっていた。

 

クライン「なっ、ここは街中!?一体どうして!」

シリカ「もしかして、あのフロアの中の一角には悪のパーティーが立ち入れない区画があったということなんでしょうか?」

エギル「いや、それは無いはず!そんな事があるならアルゴが伝えないはずがない。だったら一体……。待てよ、キリト・リーファ・アスナ、質問に応えてくれるか?」

「「「え?いいけど・・・?」」」

エギル「『Re.ゼロから始まる異世界生活』で、エミリアは大事なものを盗まれ、盗人を追いかけている途中だったにも関わらず、チンピラに絡まれていたスバルを助け、彼が盗人で無いと判明した後も、怪我で倒れたスバルを介抱し続けた。そんな彼女の行動をお前たちはどう思う?」

リーファ「ちょっとおかしいんじゃないかな?盗まれたものが無ければ困るのは彼女一人じゃなく、彼女に協力してきた人たち全員が迷惑を被るし、国にだって影響が及ぶんだよ?スバルなんか放置してすぐに追いかけるべきだったんじゃないかな?」

キリト「おれも同感かな?絡まれてるスバルに盗んだのは貴方なのかと訊いて、そうじゃないと判ったらすぐに追跡を続行するべきだったかな」

リーファ「むしろ、余計な時間を使わせたチンピラたちとスバルをサックリぬっ殺しても許されるんじゃない?」

シリカ「それは人としてアウトなんじゃないかと…」

エギル「だが、悪の属性を持つ人間らしい思考ではあるな。で、アスナはどうだ?」

それに対してアスナはほわんほわんした表情と口調で、

アスナ「え~、非難される程の事かしら?彼女は己の信念や正義感に従って行動しただけの事でしょ?彼女の味方になってくれてる人たちだって、彼女がそう言う人となりだと判っているはずだし、「さすがエミリア」とは思いこそすれ、「軽はずみな判断だった」なんて思わないし、「らしい」と思ってくれるんじゃない?大体、そう言うエミリアだからスバルが味方になってくれたんだし。ほら、何の問題も無いじゃない?」

クライン「おお、さすがアスナ!ものの道理ってやつを判ってるよな!エミリアたんマジ天使!のおれも激しく同意するぜ!」

エギル「だが、悪の属性を持つものとしてはアウトだ!アスナ、お前、さっき友好的なモンスターを見逃した影響で、善の属性に変わっちまっているな?だから、悪専用のフロアだったあの場所から弾き出された。そういう事なんだな?」

アスナ「あら~、そうかしら?(おもむろに自分のステータスを確認し)あれれ、いつの間に?」

エギル「くっ、こうなったら、マーフィーズゴーストの部屋に行くぞ!友好的なマーフィーを繰り返し倒して属性を元に戻すんだ!」

 

 

そして…

 

アスナ「エルザさん↓、

本当に素敵よねえ、憧れちゃうわぁ(ほわんほわん)」

シリカ「人として最も憧れちゃいけない快楽殺人者に憧れる!?壊れてる、絶対壊れてますよ、アスナさん!」

エギル「だが、これで元に戻ったな。一件落着だ!」

クライン「本当にいいのかよ、これで…」