今回は『祝もものき事務所3』に収録の短編、犬槇蓮翔と『見合いクラッシャー』 の感想を書いてみましたよ。

おれの好みの強い女性がまた一人登場ですね。名前は芳猿美緒。着物の似合う純和風美人で華道や茶道の師範の資格を持ち、箏(こと)や三味線も得意。書道も達者で料理上手。

特に本人が望みもしないのに見合いの話が次々と舞い込むのだそうだ。丁重に断っても世話人が引き下がらないので根負けして会い、相手は彼女の「ザ・大和撫子」的な雰囲気をすぐに気に気に入ってしまうらしい。でも、趣味が高じて仕事にまでなってしまった着物作りに夢中で結婚なんて頭に無くて毎回断っている内に親しい人たちから付けられたあだ名が『見合いクラッシャー』ってことらしい。

着物作りは場所を取るし、佳境に入ると家事をやってる場合じゃなくなるし、何より本人にこの仕事をやめて家庭に入ろうと言う気持ちが全くない。

となればこの人に見合いを持ち込む自体間違いなんだけど、外見だけを見て内助の功を尽くす貞淑な妻になってくれるに違いないと思う男には枚挙の暇がないらしい。

今回も彼女に一方的に熱を上げて、卑劣な手段まで使って手に入れようとした不埒者が、見た目は華奢で雰囲気もゆるいが古武術がベースのイケメン格闘家犬槇蓮翔と、無意識の内に他人の危険を嗅ぎつけてしまう探偵もどきの百之喜に成敗されてしまうって話でした。いや、百之喜は相変わらず道に迷っていたら、美緒さんが拉致されそうになっていたところを目撃し、蓮翔に知らせただけなんだけど。

前回の第二巻では手掛かりを知る関係者を次々と引き寄せるだけにとどまっていた百之喜の特殊能力ですが、今回の短編集ではこの話を含め遺憾無く発揮されています。彼の友人四人は例外なくかつて遭遇した窮地を百之喜の無意識の言動で救われているそうだ。蓮翔の場合には変質者に襲われそうなところに迷い子になった百之喜が現れてくれたお陰で隙を見て逃げられたそうだ。その時の彼は車で隣町のひとけの無い場所まで連れ去られていて、新しい自転車に夢中で気が付いたらそこまで来てしまっていたと言う百之喜以外の何者にも救えなかったそうで、本当に百之喜の能力は神がかってるわ。

ちなみに美緒さんが拉致されそうになっていたのは、暴漢にナイフを見せつけられて、着ていたお気に入りの着物を切られたりするのが怖かっただけで、それさえ無ければ得意の合気道で一捻りに出来たそうだ。そもそも彼女の家はとある古武術の本家で、弟は武芸全般の達人(でも職業は俳優w)だし、蓮翔の古武術もここで覚えたものだし、彼女を弱いと思う方が間違ってるんだけどね。

多分この女性は自分と同じくものづくりを天職とする男性と引き合うように巡り合って、お互いの仕事を認め合い、家事は手が空いてる方が担当するって感じでないと結婚には結びつかないんだろうね。惜しいけどおれには縁がなさそうだ。


相変わらず、この著者の書く女性は素敵だなあ。シビれるし憧れるわ。この著者の小説を読み続けて幾星霜。そんな偏った女性観が染み付いてしまったおれは齢42となっても独身なんだが。どうしてくれるんだ、茅田先生!


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