『キングダム』ってまんがに、李牧って言う名将が出て来ます。趙という国の、元々は北方の異民族匈奴に対しての戦いで功績があった人で、その後秦の先々代の王に仕えた最後の名将王騎を計略にはめて倒した人でもあります。


それだけに、どんだけ恐ろしい敵なんだと思いましたが、『キングダム』をしばらく読んでると、「あ、李牧その内死ぬな」と思えてきました。


なぜなら、彼の仕える王が暗君(バカ王)だからです。


ある時、宰相となっていた李牧が秦を訪れることになりました。その理由ってのがね、秦の宰相呂氏が趙王の寵童を拉致って、「返して欲しければ宰相李牧をこっちに迎えに来させろ」と脅したからなんですよね。


何としても寵童を返して欲しい趙王は渋る李牧を無理矢理秦に行かせた訳なんですが、秦としては名将王騎を殺されたばかりだし、先々脅威になるのは明白だからもうどうしたって李牧を殺したいんですよ。


李牧は秦が他国を攻める間、趙は秦を攻撃しませんよと言う内容の同盟条約と、重要な軍事拠点を差し出すことでようやく生きて返してもらうことが出来ましたが、それはとんでもない譲歩なんですよね。

中華統一を目論む秦の野望をしばらく手をこまねいて見ているしか無くなる訳だから。


しかも、趙には本来そんな余裕は無いんですよ?少し前の戦争で、40万人の将兵を生き埋めにされているから、絶対的に兵力が落ちてるはずだし、刎頸の交わりの故事で有名な名将廉頗(れんぱ)も暗君を見限って出奔してしまったし、秦が対外戦争で肥え太ったらかなり旗色が悪いんですよ。


そんな状況下において李牧は秦に対抗できる唯一と言っていいほど貴重な人材なのに、寵童を取り戻す為なんかに死地に追いやるようなことをするなんて、どんだけバカなんだと言いたいですよ。


だからもう、僕には先が読めてしまいましたよ。秦とすれば、趙のバカ王を操って、李牧が思うように動けないようにすればいい訳ですよ。事実、秦はそうしたらしいです。ネタバレにならないように、詳細は書きませんけどね。


「悼襄王はダメじゃ。前の王も相当じゃったが今度はたまらぬ。

バカの下で働くことほどバカなことはないぞ!


廉頗のこのセリフは李牧に向けて言ったセリフではありませんでしたが、多分李牧の耳にも入ったはずなんですよね。


寵童を迎えに行かせられた時点で、そのことが身にしみて判ったはずなのに、どうして李牧はその後もバカ王の元で働き続けようとしたのかねえ。


多分、彼としては祖国を守りたかったんだろうね。キャプテン・ハーロックの主題歌のように

「明日のない星(国)と知っても、やはり守って戦うのだ」

って事なんだろうね。


その志は立派だけど、どうやら相当にいい人だったみたいなので、ある時彼が語っていたように、

「辺境の地に戻って、そこで仲間と共に土地を守り、家族をつくって、羊でも飼って、ゆっくり年をとっていく。

そんな平穏な生活を送りたい」

って望み通りに生きて欲しかったよ。


惜しいね、李牧。