「人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」(ふろむだ)
 
 
「錯覚資産」とは、言い得て妙だな... と全面的に賛成、というか少なくとも考え方は非常に正しいと思った。

この考え方を実行するか、この生き方を選択するか、については賛否両論あるだろうが、自分としては、過去特にその自覚はなくとも、この戦略的生き方を(おそらく人並み程度には)実行してきたと思うし、本書を読んで、今後はむしろ意識的に(しかし露骨にならない程度に)実行していこうかな、と思った。

正直者が馬鹿を見る世界を肯定するようで、少し後ろめたいところもあるが、「運ゲーを楽しむ」くらいの気持ちで、錯覚資産を育ててみたい。
 
また、この戦略的生き方は、「人」を「企業」に置き換えても、ほぼ当てはまると思う。企業戦略を考える上でも、参考になる考え方だ。
 
 
 
以下、備忘
 
 
「思考の錯覚」は、ほぼ気づけない。
 
この世界は、「思考の錯覚」に満ちあふれている。
 
「プラスのイメージを引き起こすもの」であれば、なんでも、「全体的に優秀」という思考の錯覚を引き起こす。
 
例:
○○の売上を73%増やしました
○○商事の営業部長をやってました
ベストセラー本○○を担当した編集者です
ヒット商品○○のマーケティングを担当しました
○○のM&Aを成功させました
 
 
 
「錯覚資産」とは、
 
「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」
 
さまざまな種類があり、複数種類が掛け算されることで、とんでもない威力の錯覚資産が作り出される。
 
うまく運用すれば複利で増やせるため、運用のうまい人と下手な人の錯覚資産の差はどんどん開く。
 
生涯賃金に換算して、何千万円、何億円ものお金を生む。
 
 
 
錯覚資産がないと実力をなかなか伸ばせない。実力は、よい環境(ポジション、上司、同僚、部下)に恵まれて効率よく伸ばせる。そういう環境を手に入れられるかどうかは、実力よりも、むしろ錯覚資産によるところが大きい。
 
「実力があるから」ではなく「実力があると周囲が錯覚するから」、よいポジションを手に入れられている部分が大きい。
 
錯覚資産によってよい環境が手に入り、よい環境によって実力が育ち、実力があるから成果が生まれ、その成果を利用してさらに錯覚資産を手に入れる、というループが回り、錯覚資産と実力が雪だるま式に増えていく。
 
 
 
「ハロー効果」
ハロー(halo)は後光のこと。なにか一点が優れていると、後光がさして、なにもかもが優れて見えてしまうような錯覚。
 
 
 
錯覚資産は人の判断を誤らせる、空虚なハリボテ。錯覚資産による成功は、トリックによる成功。
 
この世界では、誰もが錯覚資産という武器を駆使して闘争を繰り広げている。
 
自分だけは、できるだけ錯覚資産を使わずに生きていくのもいい。しかし、それをするなら、人生がうまくいかなくなることを覚悟しなければならない。
 
 
 
成功するためには錯覚資産が必要、錯覚資産を手に入れるには成功が必要。
 
このジレンマを打開するには、「確変」(パチンコなどで当たる確率が上昇する状況)が入るまでは、小さく賭けること。
 
そして、ひとたび確変が入ったら、その間はひたすら全力で打ち続ける(全力で投資する)。
 
成功なんて運次第なので、たくさんチャレンジするしかない。
 
たまたま成功してハロー効果を手に入れたら、そのハロー効果を使って、よりよい環境を手に入れる。ex:「半期で1.5億円売り上げました」「ユーザー数を43%増やしました」
 
これは、わらしべ長者の戦略。小さなハロー効果を手に入れ、それをテコにもう少し大きなハロー効果を手に入れ、これを繰り返して、やがてすごく大きなハロー効果を手に入れる。
 
 
 
 
才能があるかないか、そうそう見分けはつかない。
 
未来のヒットが、過去にさかのぼって、現在のあなたの才能のあるなしを書きかえる。
 
「自分のやり方が正しかったから成功した」というフリをしたほうが、圧倒的に得。多くの人は、そのような成功者とビジネスをしたがるし、人材も集めやすい。
 
ひとたび成功した人が、何度も成功するのは、「その人のやり方が正しかったから」ではなく、「『その人のやり方が正しかったから』だ、と人々が錯覚するから」。
 
 
 
A 錯覚資産を増やすことばかりやって、実力を磨くこと(スキルアップ)を怠ると、1つのループが回らなくなる。
 
B スキルアップばかりやって、錯覚資産を増やすことを怠ると、すべてのループが回らなくなる。
 
より深刻なのはB。スキルアップばかりやる人は、実力はあっても成長機会を得られない。錯覚資産増やしをやっている人はよい環境を手に入れ、やがて実力も「スキルアップばかりする人」を凌駕する。
 
 
 
学歴、肩書、は強力な錯覚資産。
 
 
 
人間は「一貫して偏った間違った物語」に説得力と魅力を感じる。「バランスの取れた総合的な正しい判断」は、説得力がなく、退屈で面白くない。
 
バランスのとれた正しい主張に、人は魅力を感じない。それでは、人は動かない。「シンプルでわかりやすいこと」を、それが真実であるかのように言い切る。本当は断定できないことを断定する。その主張には、思考の錯覚の魔力が宿る。大きな錯覚資産に育っていく。
 
こういう生き方は醜い。しかし、そういう醜い生き方を避けると、錯覚資産は手に入れにくくなる。
 
醜悪な生き方だが、うまくいく人生。美しい生き方だが、うまくいかない人生。
 
美しい生き方をしながら、うまくいく人生はないのか? 成功者が見つけ出したのは、錯覚資産に「信用」や「ブランド」というラベルを貼って、醜悪さを隠蔽すること。
 
信用のある立派な人間だ。だから成功した。そう言い切ってしまえばいい。
 
醜悪なことをやりつつ、その醜悪さを隠蔽する卑劣な生き方をしながら、人生はうまくいく。
 
 
 
 
認知バイアスは、3つの脳の過剰性が引き起こしている。
 
一貫性…過剰に一貫性を求める
原因…過剰に原因を求める
結論…過剰に結論を急ぐ