「無理ゲー社会」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「無理ゲー社会」(橘玲)

 

「公平(機会平等)」と「平等(結果平等)」の整理が非常にわかりやすい。

 

50メートル走の例えで言うと、子どもたちが同じスタートラインに立って競争するのが公平。ゴールした時に同じ結果になるように調整するのが平等。子どもたちにとって理不尽と思えるのは、足の遅い子どもにスタートの条件を優遇すること(足の速い子どものスタートラインを後ろに移動すること)である。

 

才能や努力に見合った成功を、(しかも世界規模で)得ることができる、グローバル資本主義社会は、公平性という視点では優れた社会である。

 

しかし、不満を持つ人たちがいる。

 

ひとつは、不平等を是正するために割を食っている人たち。例えば、マイノリティーを優遇する結果、職を奪われている白人労働者(低学歴の若者など)。かれらにとっては不公平な社会になっている。

 

もうひとつは、絶対に勝てない競争に無理やり付き合わされている人たち。錦織圭とテニスで、藤井創太と将棋で、100回勝負したら100回負けるのが目に見えている。しかし、競争ルールが公平であれば文句のつけようがなく、黙って負けの結果を毎回受け入れなければいけない。

 

無理ゲーとは、ほんと言い得て妙だな、と思う。

 

 

以下、備忘

 

「やる気」「集中力」の遺伝率は57%、44%。努力できるかどうかのおよそ半分は遺伝で決まる。「やる気」の共有環境の影響は0%。家庭でほめたり励ましたりしてもムダ?

 

共有環境より非共有環境のほうがパーソナリティ形成への影響大。どのような友達とつき合うかが重要。また、仲間うちでの評判が親の評価よりも大事。

 

 

「自分らしく生きたい」と思う女性が増えれば増えるほど、男性の恋愛の難度が上がる。結婚や出産で「自分らしく生きる」ことをあきらめなくてはならないなら、その代償として求める男性の条件(特に経済力)はより高まる。

 

 

才能あるものにとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア。

 

上級国民・・・知識社会・評判社会において、「自分らしく生きる」という特権を享受できる人たち

下級国民・・・「自分らしく生きるべきだ」という社会からの強い圧力を受けながら、そうできないひとたち

 

 

世界は「リベラル化、知識社会化、グローバル化」の巨大な潮流のなかにあると、私は繰り返し述べてきた。資本主義は「自分らしく生きたい」「より幸せに(ゆたかに)なりたい」という“夢”を効率的にかなえる経済制度としてまたたくまに世界じゅうに広がった。その資本主義がいま、ある種の機能不全を起こしているのは確かだろう。

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ひとびとが「自分らしく」生きたいと思い、ばらばらになっていけば、あちこちで利害が衝突し、社会はとてつもなく複雑になっていく。これによって政治は渋滞し、利害調整で行政システムが巨大化し、ひとびとを抑圧する。

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リベラル化が引き起こした問題をリベラルな政策によって解決することはできない。すべての“不都合な事実”は、「リベラルな社会を目指せば目指すほど生きづらさが増していく」ことを示している。