「一歩を越える勇気」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート


★★★★☆


栗城氏は日本人では初となるエベレスト単独・無酸素登頂を目指し、それだけでもかなり大変なのに、頂上でのインターネット生中継を計画し重さ4キロの送信機を荷物に加えて登頂に挑戦した。結果は成功しなかったが、あとわずかのところまで行った。読んでいて臨場感が伝わり、十分すごい、と思った。

栗城氏は身長162センチと小柄で体力的にも平均よりむしろ少し劣るという。何が彼を無謀とも思える冒険に駆り立たせるのか。


そのルーツは両親にあるようだ。

父親は小さな町でメガネ店を経営していたが、その町では温泉が出るという伝説を信じ、たった一人で温泉を掘り始めた。すごく楽しそうに。それを見ていたまわりの人も徐々に巻き込まれるようになり、5年後にとうとう本当に温泉が出た。

その時、栗城氏は、夢を持つと人は明るくなり、元気になる。自分自身が変わると、まわりの人も明るくなる。夢はかなうかなわないは関係なく、持つことに意味がある。と悟る。


また、高校生の時に母親をがんで亡くした。母は「ありがとう」と言って息を引き取った。

その時、栗城氏は、決して弱音を吐かないこと。中途半端に生きないこと。最期に「ありがとう」と言ってこの世を去れる人間になること。を誓ったという。



あとは、基本的にドMですね。苦しみを喜びに変える、という思考。自分もトライアスロンとかウルトラマラソンとかやっているので、この感覚、わからないでもないです。




以下、抜粋。


「苦しみにありがとう」
僕は本気でそう思いながら山を登っている。苦しければ苦しいときほど、出てくる言葉だ。
(中略)
一歩が出ないほどつらいとき、「ありがとう」と口にすることによって一歩が出る。
逆に、山に対して「ちくしょう」とか「負けないぞ」というような気持ちを持ってしまうと、力は出ない。山に対峙してはいけないのである。
苦しみも不安もすべては自然の一部であり、僕らはその自然の中の一部である。
苦しみを受け入れ、そして感謝する。「ありがとう」は、困難な時代を乗り越える力のある言葉かもしれない。







一歩を越える勇気/栗城史多

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