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ザッカーバーグの考え方の変遷、Facebookのサービスの進化の過程、が詳細に描かれ、ソーシャルネットワークを十分使いこなしている人にとっても、ソーシャルネットワークの理解が深まる一冊になると思います。
大成功した起業家のストーリーとしても充実した内容の読み物です。
プロフィールサイトとしてスタートしたFacebook。その後の、ウォール機能、写真アプリ、ニュースフィード、プラットフォーム戦略、(失敗した)ビーコン機能、などを通じ、ザッカーバーグはソーシャルグラフの重要性に確信を持ちます。
ユーザーは何を見たいのか。
「自分の家の前で死んでいくリスのほうが、アフリカで死んでいく人たちよりも、たった今は重要かもしれない」
と。
しかし、
「『自分はいかに重要な人物か』を世界に訴えかけるためのパフォーマンスの舞台」(それはハーバードの学生が最も得意とするところだった)が本質だったFacebookは、友人を広げすぎました。
今後は、ユーザーがいかに情報を制御していけるか(制御できるような機能強化や啓蒙ができるか)、がひとつのポイントだと思います。
ザッカーバーグがこだわりを持つ、(実名主義を前提とした)「アイデンティティはひとつ」「究極の透明性」「オープンな社会」が現実となるのか理想に終わるのか、Facebookの壮大な今後の実験だと思います。
最近、映画「ソーシャルネットワーク」の公開などもあり、Facebookへの関心は一段と高まってきました。現状においては、匿名に偏ったネット文化の日本、ムラ社会に代表される社交性の乏しい閉鎖的社会の日本、において「実名主義」をベースにしたFacebookは流行らない、という議論が割りと大勢を占めているように思います。
楽天が創業した当時は誰もがインターネットショッピングは成功しないと言っていたように、ブログで個人がこんなにも情報発信する世界がくると誰も予想できなかったように、実名主義もあとで振り返ってみればあんな議論もあったな、と思えるくらいそこそこ浸透する可能性があると思います。
それよりも、Facebookの理想郷が現実となるかどうかは、もっと別のところにハードルがあるのかな、と思っています。
■備忘。ザッカーバーグ語録。
「フェイスブックをユーティリティーだと考えている」
「いろいろ考えた末、フェイスブックの核をなす価値は、友達との一連のつながりにあるという結論に達した」
「自分の家の前で死んでいくリスのほうが、アフリカで死んでいく人たちよりも、たった今は重要かもしれない」
「情報共有の手段を改良するだけで人々の人生を変えることができる」
「ぼくたちは、人々が情報共有するための力を与えるためのツールだ。だからそのトレンドを推進している。そのトレンドに従って生きていくしかほかはない」
「世界がますます透明な方向へと動いていくことは、次の10年、20年に起きる変革のほとんどを後押しするトレンドになるだろう。(中略)しかし、どうやってそれが起きるかという大きな疑問が残る。誰かに透明性についてどう思うかを聞くと、頭の中にマイナスイメージを浮かべる人もいる――監視世界の光景だ。本当に陰惨な未来を描くことだってできる。(中略)ぼくは、透明性が高まっていくトレンドは不可避だと信じている。もっとも、この側面[われわれが常に監視される社会になる]がどうなるかは、正直なところぼくにはわからない」
「みんなが共有したいものを共有できるようにして、何を共有するかを制御できるよいツールを渡せば、さらに多くの情報が共有されるようになる」
「世界がますます情報共有する方向に進む時、それが確実にボトムアップで行われる、つまり人々が自分たちで情報を入力して、その情報がシステムでどう扱われるかを自ら制御できるようにする必要がある。どこかの監視システムに追跡される集中制御型ではなく。これは世界のために決定的に重要なことだと私は思っている」
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)/デビッド・カークパトリック
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