「バブルは別の顔をしてやってくる」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆

日本の80年代バブル、ITバブル(2000年頃)、証券化バブル(2007年頃)、さらには現在進行中かもしれない中国バブル、環境バブル。人間の英知はリスク管理手法を高度化させているはずなのに、バブルの生成・崩壊のサイクルはむしろ高頻度になっている。

著者はバブル再来のリスクとして4つのパラドックスを挙げる。


1.危機対応のパラドックス
金融面での危機対応の技術力が進歩して崩壊時のダメージを忘れやすくなっているので、逆に次のバブルが再燃しやすくなっている。

2.格差のパラドックス

景気が低迷している先進国の金融緩和効果が経済の好調な新興国に流れて資源インフレなどを引き起こす。

3.基軸通貨ドルのパラドックス
ドルが弱くなり米国の金融緩和圧力が高まると他国の為替レートが上昇しドルの資金流入がさらに活発化する。

4.資金還流のパラドックス
新興国で経済成長によって蓄積された外貨が先進国の国債などに回り先進国の金融緩和・世界的な過剰流動性にフィードバックされる。


1については、つい1年前まで「100年に一度の経済危機」を連呼していたのに、(ペースはともかく)景気は既に回復し、金融機関は軒並み大幅な黒字を計上し、案外すんなり危機を脱出した感が、確かにする。

2-4については、経済・金融のグローバル化が進んで、世界中のお金がすばやく動き、特定の地域や分野にお金が集中しやすくなっている、ということが言えると思う。


「人間の性質と金融革新を考えると、現在の危機の記憶が薄れれば、システミックリスクが自由経済を再び悩ませるのはほぼ確実である。わかっていないのは、次の危機がどのような形態をとるのかということだけである」
(ピムコ社、ポール・マカリー氏)

バブルは別の顔をしてやってくるから予測や事前の対策は難しい。バブル発生は必然なものという割り切りは必要だと思います。



バブルは別の顔をしてやってくる(日経プレミアシリーズ)/熊野 英生

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