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橘玲氏の本を(翻訳本を除いて)初めて読んだ。非常に共感できて良い本だった。
お金とか経済合理性とか市場経済とか、そういうテーマに関する冷静・冷徹・辛辣な論調の中にも、正義とか道理とか平等とかをきちんとわきまえた主張をしています。本人自身が過去に経済的に苦労していたり友人が自殺で亡くなったり、そういう体験をしているので、学者の言葉より説得力を感じます。
人生を経済的側面から語るなら、その目的は何ものにも依存せずに自分と家族の生活を守ることのできる経済的独立を達成することにある。
自由とは人生に複数の選択肢を持つことだ。国家であれ社会であれ、経済的に第三者に依存し、そこにしがみつくしか生きる術がないのなら、新たな一歩は永遠に踏み出せないだろう。
自由に生きるために一定量の貨幣が必要なら、与えられた資源を有効活用し、最短距離で目標に達成することで人生はより豊かになるはずだ。経済合理的に行動すべき理由がここにある―――
自由や富が幸福な人生を約束するわけではない。それは未知の世界を旅する通行証のようなものではないだろうか。
いつの日かその扉を開けてみたいと、私はずっと夢見てきた。
P.141-142
本書の書名については、とくに意味があるわけではない。
子どもが生まれたばかりの頃、六畳一間に小さな台所があるだけの古いアパートで、その寝顔を見ていた。いつの間にか日が暮れかけて、雨の音がした。玄関を開けると、雑草の生い茂る庭に銀の雨の匂いがした。そんな些細なことを覚えているのは、その時、人生は美しいと知ったからだろう。
P.213
※単行本で発行されたときの書名は「雨の降る日曜は幸福について考えよう」
知的幸福の技術―自由な人生のための40の物語 (幻冬舎文庫)/橘 玲
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