「マッキンゼー式 最強の成長戦略」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

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成長戦略として最も重要なのは「競争の場」の選択だという。つまり、既存事業のシェア拡大よりも伸びている市場に参入することだと。


成長要因を大きく分けると次の3つに分けられる。①ポートフォリオ・モメンタム(市場自体の成長性)②M&A③シェア獲得、である。実際にこの3つがどの程度のインパクトをもたらしているか。本書によれば大企業の売上の平均CAGRは10.1%で、これを3つに分解するとポートフォリオ・モメンタム6.6%、M&A3.1%、シェア獲得0.4%となる。また企業間の成長格差の寄与度でみると、ポートフォリオ・モメンタム46%、M&A33%、シェア獲得21%となり、やはりどの市場を選択するかが最も重要で、その次がM&Aである。

確かに、トヨタなどシェア拡大で伸びている企業もあるにはあるが、成長著しいFacebookなどは市場自体が高成長しているし、Yahoo!そしてGoogleも成長が鈍化してきたがその要因は市場成熟化と言える。ただ、MySpaceのように高成長市場の中でシェアを落として伸び悩んでいる企業も結構存在する。成長市場を選択することは重要だが、その市場でシェアを落とさないことも同じくらい重要だ。もしくは、アップルのiPhoneのように成長市場を自ら創出できれば理想である。


市場を選択する上で重要なポイントは、市場を細分化して捉える(「微粒」のレベルで捉える)グラニュラリティーという概念である。これは①フォーカスする、②現場に権限を委譲する、という点で特に大企業にとっては良い戦略だと思う。

またM&Aに関して、一般に言われているほど(一般にM&Aはその後の株価パフォーマンスで見ると70-80%が失敗)成長戦略としては悪くない、むしろ有効だと本書は主張している。本書の分析では成功22%、ニュートラル46%、失敗31%であり、70%は失敗していないという。これはちょっと苦しいロジックだが、いずれにしても小規模のM&Aは成功確率が高いと思うので、やはりグラニュラリティーのレベルで戦略を考えることは有効であろう。


ただ、

そもそも、企業が社会に対してどのような価値を提供したいのか、というビジョンに基づいた活動の結果が成長であり、成長することが目的でそのために事業を選択するという考え方にはやや違和感がある。もっとも、成長市場で競争力を維持するためには高い付加価値を発揮することが必須となるので結果的に社会に貢献するとは思う。本書では、成長しない企業は株主投資利回りが低いし存続できる確率も低いという前提を提示している。



マッキンゼー式 最強の成長戦略/パトリック・ヴィギュエリ

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