「資本主義は嫌いですか」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆


今回のバブル発生と金融危機の過程を理解するには、読みやすく分かりやすく、よい本であろう。


世の中、資本主義バッシングが勢いづいてきた感はあるが、本書はバブルを一概に否定せず、歴史は「規制緩和」と「規制強化」を繰り返す、と冷静な結論で締めくくっている。




以下、備忘録



成長率>投資収益率(金利)=動学的効率性の条件が満たされない状態

アジアやアルゼンチンの通貨危機、資本輸入の抑制
新興国「成長の飛躍」⇒一時的な幸運?、所得配分の不平等⇒過剰貯蓄
「貧しい国」が「豊かな国」へ資本を輸出
資本輸出による為替レートの抑制(通貨高は輸出に好ましくない)

新興国における投資対象の不足

過少投資

貯蓄過剰

金利低下

住宅ローン審査の規制緩和

住宅バブル

仕組み債、CDSなど現代錬金術

サブプライム危機

時価会計の弊害(振幅増大、ネガティブスパイラル加速)




「現状維持を目指した規制」が、経済に必ず恩恵をもたらすということはできない。なぜなら、もしかしたらそれによって、「発明と創造の芽」が摘まれてしまうことになるかもしれないからだ。「過剰流動性」に後押しされたリスク認識の低下なしに、「IT革命」のような大胆不敵な事業が、果たして達成できたかは疑問である。
このような規制が、経済に恩恵をもたらすかどうかは定かではなくても、一つのことだけは確かであると言える。それは、今後も世界経済の潮流が、「規制の強化」と「規制の緩和」の間を揺れ動くだろうということである。1930年代の「大恐慌」に懲りて、世界の主要国は金融規制の強化に走った。その結果、日本でも「護送船団方式」が確立した。そのような厳重な規制が、金融イノベーションの障害になったことは間違いないが、他方で第二次世界大戦後、1970年までは、主要先進国で銀行危機が1件も起こらなかったという「安全性」の高いスタンダードが実現したこともまた事実である。
しかし、金融危機が起こらず、30年代の金融危機の記憶が薄らいでいくとともに、厳重な規制は次第に、単に「イノベーション」を遅らせるネガティブな意識しか持たないと評価されてきた。その結果、金融システムの規制緩和が加速する。そして「サブプライム危機」が起きた。振り子はまたもとの方向に振れるだろう。といって、それが最終的な落ち着き場所というわけでもない。しばらく金融危機が起こらなければ、過去の「サブプライム危機」の記憶も薄れて、規制緩和を求める声が強まり・・・・・・まあ、歴史とはこの繰り返しだと考えたほうがよい。
P.278




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