「フリーコピーの経済学」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★☆☆

コピーが容易になっていくトレンドは変えられないという前提でビジネスモデルを考えていくべき、という論調には賛同。その解として紹介されている施策に特に新鮮さはなかったが、コピーの歴史やコピーの既存市場への影響などはよく整理されていて勉強になった。

自分なりに儲ける施策を2つに集約すると、
①コピーできないもので稼ぐ
②コピーのコストを下回る価格で提供する
のどちらかであろう。

①はフィギュアのおまけ、特典映像、ライブ、コミュニティ(参加料・アイテム課金)、など
②の代表はiTMSで、容易に欲しい曲を探して購入できる利便性が不正コピーするコストと比較してリーズナブルな価格で提供されているため、みんなお金を払ってでも利用している。レディオヘッドやプリンスの取り組みも、直接消費者に届けて流通コストや販促コストを大幅にカットしているので成り立っているといえる。

また、広告も収益モデルの一つだが本流ではないだろう。膨大になるコンテンツ利用履歴を活用する仕組みに言及されていたが(BTA的なものだろう)、大口の広告主(金融、自動車、不動産、化粧品、交通・レジャー)にとってコンテンツ利用履歴情報がどの程度有用か疑問である。



テレビ、カセットテープ、レンタルショップ、などが登場したとき、当時のインパクトはかなり大きかったのではないかと思うが、今では当たり前になっているし、市場全体も活性化していたりする。


YouTubeやファイルコピーなどの問題も、いずれ落ち着くところに落ち着いて、喉元過ぎれば熱さを忘れるのだろう。


■コピーの歴史
・演劇、映画、テレビ、VTR、DVD
・演奏、レコード、ラジオ、テープ、デジタルコンテンツと配信

■コピーの影響について
・WinnyやYouTubeがマイナス影響をもたらしたという有為なデータは検証されない
・CCCDがプラスの影響をもたらしたという有為なデータも検証されない
・音楽市場が縮小したのは若年人口の減少やエンタメ間の時間の奪い合いが要因



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