「関ヶ原」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆


策士、徳川家康は


この器量人は、信長や秀吉のような電発的に才気がはたらくたちではなく、わかりきった問題でも熟慮を重ねてゆく。中巻P.103


この冒険ぎらいの老人は、戦略の冒険性をすべて消してゆき、勝利がほとんど事務化するほどの状態まで事を運び、時を待ち、しかるのちに腰をあげようとするのである。下巻P.130


家康は戦術より戦略で勝利を得ようとし、開戦以前から西軍の切りくずしを進め、いまや敵の大半に対して内部工作の手を打っている。(中略)家康にとって戦争はすでにページェントにすぎず、その進行と勝敗は脚本化されているといっていい。下巻P.266



一方、石田三成は


自分に有利な、自分にとって光明になる計算しかできないのである。表裏あわせて読むという能力に、この男ほど欠けている人物も少ないであろう。下巻P.280


戦術家にとってめしよりほしいのはすこしでも多くの現実と事実であり、それ以外になかった。既に銃声のきこえているこの戦場で、"べきだろう"という観念論など、むしろ有害であった。三成の現実を見る目は、その観念によってつねにゆがんだ像しかみえないのではないか。下巻P.284



戦さも、政治も、ビジネスも、人を動かすのは義よりも利なのだろうか。


(義というものは、あの社会にはない)
関ヶ原の合戦なかばにして三成はようやくそのことを知った。利があるだけである。
人は利のみで動き、利がより多い場合は、豊臣家の恩義を古わらじのように捨てた。小早川秀秋などはその最たるものであろう。権力社会には、所詮は義がない。
下巻P.391

義・不義は事をおこす名目になっても、世を動かす原理にはならない。下巻P.417


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