三姉妹で訪ねる認知症両親の施設。
母は入れ歯が入っておらず
惚けたおばあちゃん状態だった。
アルツハイマーで全介助要介護5の母。
つまり母は正確な言葉で
意思を伝えることができないのが通常。
ところが部屋に入ってすぐ、
妹次女が母に
「こんにちは!」
というと母は、
急にしっかりした目つきになって
「何にもしてくれない」
という。
その上さらに、
母は自分のお尻をパンパン叩いた。
察しの良い方ならおわかりだろう。
そう!母は。
「オムツが気持ち悪いからトイレに行きたい!」
「オムツをかえたい!」
と意思表示しているのだ!
もうびっくり!
ここまではっきり意思表示する母は
お久しぶりもお久しぶりだ。
わたしも母に挨拶する。
母はわたしを認識して、
わたしが母に
「ここ(オムツ)気持ち悪いの?」
と聞く
「はい!」
と声で答えた後に頷いた。
確かに濡れているし
臭いもきつい。
詰所にお願いに行くと、
すぐに来てくださって着替えとトイレに。
トイレの便座に座った母に
妹三女が見える場所から
声かけをする。
なにかを一生懸命しゃべる母。
わたしと妹次女は、
遠巻きに隠れて
母に話しかける。
しばらくすると小が出た。
トイレに座ってから
大小が出るまで時間がかかる。
からだの機能が徐々に落ちている。
母にゆっくり安心してもらいながら、
待てばトイレでできる。
すっきりした母は表情が明るくなった。
三姉妹はすかさず母に声をかける。
「すっきりしたね!お母さん!」
「たくさん出たね!お母さん!」
「気持ちいいね!お母さん!」
トイレで排泄することは
気持ちのいいことだ、
素晴らしいんだ、
嬉しいね、
と母に伝えるために、
うきうきした調子で
笑顔で声かけする。
声はかけるけれど、
姿を見せるのは多くて二人。
そこは配慮が大切。
そうして母は、
しっかり自分を表現でき、
それにわたしたちが答え、
ご機嫌が良くなった。
からだとこころ、どちらも大切にする。
排泄は生きていれば当たり前。
でもその当たり前を自分で出来ないのが母。
それを介助するとき、
心を込めて寄り添い、
すっきり気持ちよくできること。
それはもはや母にとって
とても幸せなことなのだ。
わたしには何気ない一瞬だけれど、
母の排泄がうまくできることは、
生きているというしあわせ。
おいしく食べ、気持ちよく出す。
現在母の確かなしあわせだ。
しあわせは生きていれば、
その環境でどんどん変わっていく。
その時々を楽しめたら最高だ。
母のしあわせに一番近いのは誰だろう?
今母の命を支えてくださる
介護スタッフのみなさまおひとりおひとり。
どうぞ母をよろしくお願いします。
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松元佳子
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