認知症両親のお口の健康維持管理
2007年
母が介護保険認定で要介護2となり、
サービスを利用するようになった。
当時部分入れ歯をしていた母。
部分入れ歯に不具合が起きた。
しかしアルツハイマーの母を
わたしがこれまで母が通院していた歯科医院に
連れて行くのは難しいと思われた。
ケアマネージャーに相談したところ、
「訪問歯科診療を受けては?」
と提案された。
「訪問歯科診療?」
当時聞いたこともない単語だった。
とにかく治療できるならお願いするしかない。
お願いするとすぐにケアマネージャーは、
訪問歯科診療をしている医院の先生と連絡を取り、
段取りしてくださった。
そのおかげで、
訪問歯科診療というサービスを受け、
なんとか母は自宅で落ち着いて診療してもらい、
治療と部分入れ歯の不具合を調整できた。
それ以来両親は、
その歯科医院のお世話になっている。
両親が施設に入所した今でも、
月に1回の訪問診療を受けている。
さて両親のお口の健康維持管理は、
訪問診療の先生に
事細かくアドバイス頂いて
三姉妹で実践してきた。
まずわたしが先生と歯科衛生士のお二人に
母のお口のブラッシングなどの
お手入れの基本を教わる。
その練習をまずは夫に頼む。
その後、夫に感想を聞き、
自分も夫にしてもらう。
そうすると目から鱗なことが盛りだくさんだった。
例えば
わたしが夫の口に歯ブラシを近づける行為。
教わった通り、
声かけしながら夫の口に歯ブラシを近づけると
夫が何度も
「怖い!怖い!」
という。
これからわたしが夫の歯磨きをするのが
わかっているのにである。
その夫の「怖い!怖い!」で、
わたしが夫の口に歯ブラシを入れるのが怖くなった。
つまりなんと歯磨き以前の行為で
信頼関係と安心安全の確認を
必要とすることが判明。
歯ブラシを口に近づけるスピードや
歯磨きをするからお口を開けて?!
の声かけから
歯ブラシを近づけて磨くときに
わたしがどういう風にするのか?
という説明。
その間合いや
手指の動かし方の角度やスピードと
その動作をするための
声かけのタイミングとバランスなど。
入れ歯の手入れや
歯磨きがきちんとできない母のかわりに
わたしがやるだけだ!
とできることを疑わなかったし、
そこに怖いという感情が入る隙があると
思いもしなかった自分を発見。
さらに
当たり前だが自分以外の人の歯磨きは難しい。
さらにさらに
これまでの習慣というものが大人にはそれぞれある。
その習慣との違いもあるし、
磨き方の順番、
ちょっとした力加減というか、
ブラシの角度と動かし方、
ふき取りスポンジの圧のかけ方や動かし方
歯間ブラシの入れ方や
汚れを効率よくとる角度調整の仕方
お口の開き具合
ブラシなどをもつ右手と
右手の動きを補助するための
左手の上手な使い方など
細かく気づかいが必要なことが
想定外にたくさんあって難しい。
夫にわたしの歯磨きをしてもらったが、
それはもう本当に恐ろしかった。
わたしだけでなく夫が
わたしの口を触るのは怖い
と言いながらやるわけで。
それを聞くのがまた怖い!
かくして、母のお口のお手入れを
させてもらうようになった。
母の調子が悪いと、
歯磨きさせてもらえないし、
歯周病で腫れた部分を
歯ブラシの角度を変えるとき
うっかり強く触ってしまい、
歯ブラシを噛んだまま
お口を開けてもらえなくなったり。
部分入れ歯をはずすとつける
の意味がわからない母がこわがって、
めちゃくちゃ抵抗されたり。
怖いと痛いが揃うと、
稀に蹴られたり殴られたり。
母をお口も気持ちも傷つけずに
優しく暖かな気持ちでお手入れする
という高難度の介助。
母に鍛え上げられた。
あまりにも優しくし過ぎると!!!
母は歯磨きの途中で眠ってしまうのだ!
まさか!そんな!!!
お口のケアはとてもプライベート。
1日3回が母のストレスとなることが多く、
1日1回でも丁寧に全体をケアするか、
全体のケアを1日数回にブロック分けし、
トータルでケアできるようにするなど、
数々のパターンや工夫が必要。
訪問歯科診療で先生や衛生士の方々に
あれこれテクニックを教えて頂く。
最低限のラインは守ろうとハードルを下げてみたり。
努力と工夫の連続。
そのおかげで認知症両親の
お口の健康がある程度たれてきたから、
両親は今でも揃って元気なのかな、
と思いたい。
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松元佳子
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