義父は肩骨折リハビリのため大阪の自宅で療養中。
そのため義父の伯母を訪問するのは、私たち夫婦に与えられたミッション。
こちらも私の両親同様、基本週1回。
穏やかな両親とは真逆の伯母。
子どものころから並々ならぬ苦労をしているので、
めちゃくちゃ気も押しも主張も強い。
そんな伯母の唯一のこころの拠り所で親族が義父。
そしてその義父が今年伯母の入院中に伯母の長年暮らした住まいを引き払う。
伯母は入院中も施設入所後も自宅に帰りたがっていたのだが、それが叶わず仕方なく自宅を引き払うことを同意した。しかし伯母は認知症で記憶が行ったり来たりする現在、帰る場所を失ったという不安に襲われている。そして義父が訪ねてこないという不安。拠り所に関する二重の不安が夜の不眠や易怒性の高まりで職員を悩ませているらしい。そのことを、伯母に面会する前に言われた。それは理解できるが、その話をしないよう強要するような発言や嘘の話をするよう指導され、いささかむっとした。
というのは。
認知症とはいえ、不安に対する記憶は比較的正確でしっかりしているからだ。
その点について、前後も話の筋も記憶もしっかりしている部分が多い。
そして、人の嘘を直感で見破る。
嘘をついて伯母の信頼をなくす事が問題だ。
それは両親で経験済み。
曖昧にするのはありだが、見え透いた嘘はいけない。
それを家族に自分たちの都合をほかの利用者に対する迷惑という口実で押し付けるのはいかがなものか?プロとしてプライドはないのだろうか?まるで私は仕事ができません、だから私の仕事が増えないように家族が協力してくださいとは残念だ。
話が脱線して失礼。
伯母の部屋では、伯母が義父のことを質問したら、根気よく曖昧に同じ話をし続けた。
とにかく伯母は孤独で不安なのだ。
この世に独りぼっち。
その不安に襲われるたびに、何度も何度も同じ質問をする。
大事なことは、伯母に安心してもらうこと。
何度も同じ話をする伯母を観察しながら、何が不安の原因かを具体的に探り、それに対するどのような答えに納得するかを試すことを繰り返す。
とにかく質問されるときは、同じ質問だと決めつけないことが大切。
同じ質問だと思うことでも、ちょっと答え方を変えると、伯母の質問が変わる。
どのくらい変わるのか?
そのときの相手の状態、たとえば興奮状態なのか?呼吸が早くなっていないか?胸呼吸ではないか?筋肉が硬直していないか?瞳の色はどうか?どのような答えならば、少し落ち着く気配がみられるのか?注意深く観察する。
すると、答えによって伯母自ら話をすり替えることが何度かあった。
しかししばらくすると再び不安になって元の質問に戻る。
その間合いが1時間の間に次第に伸びた。
ちなみに伯母が自らすり替えた話は、昔話。
伯母の苦労話だ。
何度も何度も内容は同じ話だが、質問や相槌を変えるとさらに詳しく話してくれた。
話している間は夢中になるので、不安はなくなる。
質問や相槌は、いかに伯母が頑張ったか、素晴らしいかといったポジティブな視点から。
ネガティブな視点になったとたん不安に陥り孤独の話に逆戻り。
伯母の話はエンドレスではあったものの、昔話を引き出すことで自信を少しとりもどし安堵の様子はうかがえた。
例えそれが一瞬であっても、無駄とは思わない。
これを続けることで、学習機能の別回路をつなぐ希望が持てる。
それは両親で実証済みの確信。
大切なのは、伯母に安心を少しでも感じてもらうこと。
絶対に不安や絶望を感じさせないこと。
不安や絶望は、神経を逆なでする。
そこから相手への威嚇攻撃が始まる。
不穏行動や暴力がそれだ。
とにかく安心を少しでも感じてもらい根気よくお互いの信頼関係を築くことが大切。
ちょっとした顔色、からだの緩みやこわばり、呼吸、瞳の色など観察すること。
五感をフルに使ったコミュニケーションで相手を知ることで柔軟な対応や解決法が見つかるのだ。
それは、解決することである場合もあれば、
解決不可能である場合、
例えばストレス発散のために必要な言動があり、
その場合は放置し時間が過ぎればすっきりすると本人が理解していることもある。
それを見極めることが最重要。
なんでもかんでも解決できないけれども、対処法というのは案外あるものなのだ。
それは、お互いにとって心地よい時間を作り出す。
笑って過ごすことができるきっかけとなる。
決めつけてあきらめないこと。
希望をもって根気よく。
相手を観察し、自分と相手の心地よいを探すこと。
そんなこんなで、伯母とは気持ちよく「また来るね~~~!」「また来てね~~~!」でお別れできたのであった。
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松元佳子
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