世の中競争社会で、
自己防衛に走るあまり責任転嫁ばかり考えている人や、
逆に攻撃的に威嚇し続ける人など、
どちらかというと、
能動的なコミュニケーションが多い。
 
しかし。
認知症などの介護生活の場面では、
能動的な行動は大切だが、
コミュニケーションはあくまで受動的な方がうまくいく。
 
なぜか?
生きている環境が違うから。
競争できることがなくなっていくから、
時間の流れる速さも
五感の感じ方も鈍く重くゆっくりになっていく。
けれども孤独は強まる。
ひとりで過ごす時間が増え、
自分の好む他者とのコミュニケーションが取れなくなる人が多い。
 
だから介護する側は、
このコミュニケーションの切替が重要。
 
受動的なコミュニケーションとは、
・待つ
・委ねる
・信じる
・任せる
・力を抜く
・手放す
 
例え相手が間違ったことを言ったりしたりしても、
強く否定したり、
注意したり、
反論したり、
アドバイスしたり、
頑張れと励ましたり、
しないこと。
 
介護される側は、十分すぎるほど、
自分にいろいろな変化がおこり衰え、
信じられないようなミスをしでかしてしまう自分に嫌気がさしていたり、
不安で押しつぶされそうだったり、
これからどうなってしまうのか恐ろしくて仕方なくて妄想に取りつかれたりしている。
 
そこを思いやるならば、
嘘はつかないで
差しさわりのない事実を伝えるだけにすればいい。
もし発言があれば、
同じ言葉をゆっくりと穏やかに繰り返し相手に返してあげる。
 
それは、相手も自分も守るから。
安心できるから。
良い意味の嘘でもストレスを強く感じる人は多い。
あえて自分にストレスを作る嘘をつく必要はない。
「差しさわりのない事実」はポイントだ。
 
興奮している相手は、
ただただ不安怖れに取りつかれ感情が爆発している状況。
 
その相手の感情を自分の不安や怖れと混同してはいけない。
まずは、その感情は相手のものであって、自分のものではないと境界線を引くこと。
その相手の不安や怖れは相手のものであって、自分のものではないから。
 
次には安心すること、大丈夫だと知らせることが大事。
相手の投げつける言葉を、優しくゆっくりと穏やかに返す。
そこに自分の感情や思いを入れてはならない。
相手の感情にフォーカスする。
何を恐れているのか?
何をしたくてできないのか?
うけいれられないことは何か?
盗られたと思うものは何か?
相手の言うことをとにかく聞いて返す。
相手が感情的になって早くなってしまった呼吸を、ゆっくりと安定した呼吸に誘導するつもりで。
呼吸が安定すれば、ある程度落ち着きを取り戻す。
ゆっくり相手が納得するまで話を聞きながら、言葉を返してあげよう。
優しい鏡のように。
こちらから話しかける言葉は、
相手を不安に陥れる言葉ではなく相手が安心する言葉。
 
このような受動的なコミュニケーションを積み重ねて、相手との信頼関係を築く。
信頼が生まれれば、
これまで長く聞かなければならなかった話が短くなったり、
作業に協力してくれるようになる。
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松元佳子